「集合と写像」1.集合,部分集合の定義

はじめに

 この記事では,命題に関する諸々の基礎知識(必要十分条件,対偶,\(\Leftarrow,\ \Rightarrow,\ \Leftrightarrow\),などに関すること)は既知として扱う.ただし,将来的には 記事を書いて投稿する予定である(0.命題,論理の基本を投稿しました).また,複素数(特に実数)も既知とする.

1.集合,部分集合の定義

集合の定義

定義 1.1 集合

 集合とは,何が含まれていて何が含まれていないのかが明確に定められた「ものの集まり」のことである.

例 1.1 ( \(\ \mathbb{N,Z,Q,R,C}\ \) )

 すべての自然数の集まり,すべての整数の集まり,などは集合である.一般に,

\( \mathbb{N} \) : すべての自然数からなる集合
\( \mathbb{Z} \) : すべての整数からなる集合 
\( \mathbb{Q} \) : すべての有理数からなる集合
\( \mathbb{R} \) : すべての実数からなる集合 
\( \mathbb{C} \) : すべての複素数からなる集合

と表される.これらの記号は様々な場面で使われるので,覚えてしまおう!(何回もでてくるので、そのうち自然に覚えるだろうと思う.)このサイトでも,原則,ことわりなく使用する.

例 1.2 (集合ではない例)

 大きい数の集まり,美人の集まり,いい楽器の集まり,などは集合ではない.人によって,何が含まれているのかが変わってしまうからである.(このように,「中身」が曖昧な集合を,数学における「集合」から排除しておくことには重要な意義があることが,学習を進めていくにつれてわかるであろう.)

\(\ \)

元と書き表し方

 \( S \) を集合とするとき,\(S \) に \( x \) が含まれていることを,\( x \) は \( S \) の元である,あるいは \( x \) は \( S \) の要素である,という.また,これを $$ x\in S $$ または,$$ S\ni x $$ と書く.(数学で使われる多くの記号は,このように左右を反転させても同じ意味であるので,以後,原則として,このような注意は行わないことにする.それでわかりにくくなることも,特にないと思う.)
 同様に,\( x \) が \( S \) の元でないことを $$ x \notin S $$と書く.

 集合を書き表すには,要素を書き並べて \( \{\} \) でくくる,\( \{ x\ |\ x は条件 P を満たす \} \) として,条件 \( P \) を満たす \( x \) の集まりを表す,などする.また,\( S \) の元で条件 \( P \) を満たすものの集合を \( \{ x \in S\ |\ x は条件 P を満たす \} \) と書くことも多い.

例 1.3 (\(\ \in,\ \notin\ \)の使い方)

 偶数全体の集合を \( M \) とすれば,
$$ 2\in M , 4\in M , 1\notin M , -1\notin M$$
 これはまた,
$$2,4\in{M},\ 1,-1\notin{M} $$
とも書く.

例 1.4 (ある条件を満たすものの集合)

 さきほどの例1.3で登場した\(\ {M}\ \)は$$ \{\ \mathrm{n}\in\mathbb{Z}\ |\ \mathrm{n}\ は2で割り切れる\ \} $$と書くことができる.

\(\ \)

部分集合

定義 1.2 部分集合

 集合 \( {A,B}\) が与えられているとする.「\({A}\ が\ {B}\ の部分集合である\)」とは、以下の条件が満たされていることをいう.
$$ x\ が\ {A}\ の元ならば,x\ は\ {B}\ の元である $$
 このことを,$$ {A}\subset{B}$$または,$${A}\subseteq{B}$$などと書く.( 下部分が二重線になっていることもある. このあたりの記号は,書く人の好みや編集上の都合で何を使うかが異なるので,神経質になる必要はないと思う.)

\(\ \)

 部分集合の定義を与えたが,要するに,\({A}\ \)が\(\ {B}\ \)にすっかり含まれていることをいうのである.以下の例をみれば,よくわかることと思う.

例 1.5 部分集合

図1.1 部分集合

 図1.11)このような図を,ベン図という.ベン図は,わかりやすいので便宜上用いるだけであり,数学で用いる概念を直接表現するものではない.なので,ベン図に頼らなくても理解ができるならベン図は書くべきではないと思う.では,\({A}\ \)は\(\ \{-1,5,9\}\ \)であり,\({B}\ \)は\(\ \{-1,1,2,4,5,7,9\ \}\ \)である.ある数\(\ \mathrm{n}\ \)を与えたとして,それが\(\ {A}\ \)の元ならば,必ず\(\ {B}\ \)の元でもある.すなわち,\(\ {A}\ \)は\(\ {B}\ \)の部分集合であり,\(\ {A}\subset{B}\ \)となっている.

例 1.6 数の包含関係

 定義から明らかなように,$$ \mathbb{N}\subset\mathbb{Z}\subset\mathbb{Q}\subset\mathbb{R}\subset\mathbb{C} $$となっている.

集合の相等

定義 1.3 集合が等しい

 集合\(\ {A}\ \)と\(\ {B}\ \)が与えられているとする.このとき,$${A}\subset{B}\ かつ\ {B}\subset{A}$$ならば,$${A}={B}$$と書き,「\({A}\ と\ {B}\ は(集合として)等しい.\)」などという.これは,\( x\in {A}\Leftrightarrow x\in{B}\ \)といいかえることができる.もちろん,等しくないことを\(\neq\)で表す.

 集合が等しいことを示したいときは,\( (左辺)\in(右辺)\) と\( (右辺)\in(左辺)\) の両方を示す,すなわち,\(x\in (左辺)\) と \(x\in (右辺)\) が同値であることを示す.

例 1.7 区間

\( (a,b)=\{\ x\in\mathbb{R}\ |\ a < x < b\ \} \)
\( (a,b]=\{\ x\in\mathbb{R}\ |\ a<x\leq b\ \} \)
\( [a,b)=\{\ x\in\mathbb{R}\ |\ a\leq x<b\ \} \)
\( [a,b]=\{\ x\in\mathbb{R}\ |\ a\leq x\leq b\ \} \)

 上記の集合を,それぞれ開区間,左半開区間,右半開区間,閉区間,という.\(\mathbb{N,Z,Q,R,C}\ \)同様,慣例となっている表し方である.(不等号の下の線が一本しかないのが気になる人もいるかもしれないが,この線の数に,特に意味はない.)

定義 1.4 真部分集合

 集合\({A,B}\ \)が与えられているとする.$${A}\neq{B}\ かつ\ {A}\subset{B}$$であるとき,\({A}\ \)は\(\ {B}\ \)の真部分集合であるという.(もちろん,記号\(\subset\)はこの場合にも使うことができる.2)これについては,部分集合を表す意味で\(\subseteq\)を使い,真部分集合を表すのに\(\subset\)を使う,など様々な記法がある.当サイトでは,こうした記号の区別は行わず,必要があれば文章で注意をおこなうことにする.定義から明らかなように,\({A}\ \)が\(\ {B}\ \)の真部分集合であるとき,\({A}\ \)は\(\ {B}\ \)の部分集合なのだから.)

例1.5および例1.6で出てきた集合の包含関係は,真部分集合の例にもなっている.

空集合

定義 1.5 空集合

 集合として,元を全く含まないものも考えることができる.この,「元を全く含まない集合」を空集合といい,$$ \emptyset $$ で表す.

 空集合\(\ \emptyset\ \)は任意の集合の部分集合である.先ほどの部分集合の定義に照らし合わせて考えてみてほしい.高校で数学を学ぶときには意識しないことが多いが,命題「\(\ {P}\Rightarrow{Q}\ \)」は,仮定である \({P}\ \)が成立していなければいつでも真であることに注意されたい.対偶を考えると,その意味がよくわかると思う.(空集合は非常に重要なものであるので,のちに登場する「空写像」などと共に独立した,よりくわしい記事を書く予定.)

 この節はこれでおわりである.登場したことばや記号はどれも高校でならうような基本的なものであるが,非常に重要なので,最終的には漏れなく暗記できているように学習をがんばるべし!

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References   [ + ]

1. このような図を,ベン図という.ベン図は,わかりやすいので便宜上用いるだけであり,数学で用いる概念を直接表現するものではない.なので,ベン図に頼らなくても理解ができるならベン図は書くべきではないと思う.
2. これについては,部分集合を表す意味で\(\subseteq\)を使い,真部分集合を表すのに\(\subset\)を使う,など様々な記法がある.当サイトでは,こうした記号の区別は行わず,必要があれば文章で注意をおこなうことにする.