「集合と写像」2.集合の演算

2.集合の演算

 今回の記事では,集合の各種演算の定義と性質を紹介する.

共通部分,和,差

定義 2.1 共通部分,和,差

 \(A,B\) を集合とする.記号\(\ \cap{},\cup{},-\ \)が,以下のように定義されている.1) \(\stackrel{\mathrm{def}}{=},\stackrel{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}\)といった記号は,定義を示すときに「導出されたものではない」ということがわかるように使われる.def は,definition の頭の def である.

$$\begin{align} A\cap{}B&\stackrel{\mathrm{def}}{=}\{\ x\ |\ x\in{}A\ ,かつ,\ x\in{}B\ \}\\
A\cup{}B&\stackrel{\mathrm{def}}{=}\{\ x\ |\ x\in{}A\ ,または,\ x\in{}B\ \}\\
A-B&\stackrel{\mathrm{def}}{=}\{\ x\ |\ x\in{}A\ ,かつ,\ x\notin{}B\ \}\end{align}$$

\(A\cap{}B\) を\(A\) と \(B\) の共通部分,交わり,交叉,\(A\cup{}B\) を\(A\) と \(B\) の和,和集合,\(A-B\) を\(A\) と \(B\) の差,差集合,などという.2) 差集合を表すのに,\(A-B\) ではなく,\(A\setminus{}B\)が使われることもある.

 共通部分は \(A,B\) 双方に含まれる元の集まり,和集合は \(A,B\) の少なくともどちらか一方に含まれる元の集まり,差集合は, \(A,B\) のうち,片方にのみ含まれる元の集まりとなっている.

図 2.1 左から順に,\(A\cap{}B, A\cup{}B, A-B\) を表すベン図

\(\ \)

例 2.1 

 \(A=\{1,2,3,4,5\}, B=\{2,4,6,8,10\}\) とする.このとき,$$ \begin{align}
A\cap{}B
   &=\{2,4\}\\
A\cup{}B
   &=\{1,2,3,4,5,6,8,10\}\\
A-B
   &=\{1,3,5\}\\
B-A
   &=\{6,8,10\}
\end{align}$$

定理 2.1 交換法則

\(A\cap{}B=B\cap{}A\)
\(A\cup{}B=B\cup{}A\)

 これは,\(A\cap{}B\) と \(A\cup{}B\) の定義の述べ方から明らかである.

定理 2.2 結合法則

\( (A\cap{}B)\cap{}C=A\cap{}(B\cap{}C) \tag{1}\)
\( (A\cup{}B)\cup{}C=A\cup{}(B\cup{}C) \tag{2}\)

証明

$$\begin{align}
x\in{}(A\cap{}B)\cap{}C{}
&\Leftrightarrow{}x\in{}A\cap{}B\ かつ\ x\in{}C\\
&\Leftrightarrow{}(x\in{}A{}\ かつ\ x\in{}B)\ かつ\ x\in{}C\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A{}\ かつ\ x\in{}B\ かつ\ x\in{}C\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A{}\ かつ\ (x\in{}B\ かつ\ x\in{}C)\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A\ かつ\ x\in{}B\cap{}C\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A\cap{}(B\cap{}C)
\end{align}$$これにより,\( (1)\) が示せた.同様に,
$$\begin{align}
x\in{}(A\cup{}B)\cup{}C{}
&\Leftrightarrow{}x\in{}A\cup{}B\ または\ x\in{}C\\
&\Leftrightarrow{}(x\in{}A{}\ または\ x\in{}B)\ または\ x\in{}C\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A{}\ または\ x\in{}B\ または\ x\in{}C\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A{}\ または\ (x\in{}B\ または\ x\in{}C)\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A\ または\ x\in{}B\cup{}C\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A\cup{}(B\cup{}C)
\end{align}$$として,\( (2)\)が示される.(証明終)

定理 2.3 分配法則

\(A\cup(B\cap{}C)=(A\cup{}B)\cap(A\cup{}C) \tag{3}\)
\(A\cap(B\cup{}C)=(A\cap{}B)\cup(A\cap{}C) \tag{4}\)

証明

\( (3) \)の証明

 まず,\( (左辺)\subset(右辺)\)を示す.\(x\in{}A\cup(B\cap{}C)\) と仮定する.$$
x\in{}A\cup(B\cap{}C)\Leftrightarrow{}x\in{}A\ または\ x\in{}B\cap{}C$$なので,\(x\in{}A\) の場合と,\(x\in{}B\cap{}C\) の場合とに分けて考える.(\(A\cup(B\cap{}C)\) は集合なので,これですべての場合を尽くしている.)

(i) \(x\in{}A\) のとき

 \(x\in{}A\) であるから,\(x\in{}A\cup{}B\) が成り立っていて,同時に \(x\in{}A\cup{}C\) も成り立っている.したがって,\(x\in{}(A\cup{}B)\cap(A\cup{}C)\)

(ii) \(x\in{}B\cap{}C\) のとき

 \(x\ \)は,\(B, C\) のどちらの元でもあるので,「\(x\in{}A\cup{}B\) かつ \(x\in{}A\cup{}C\)」 が成り立っている.よって,\(x\in{}(A\cup{}B)\cap(A\cup{}C)\)

 以上により,\([x\in{}(左辺)\Rightarrow{}x\in{}(右辺)]\ \)が成り立つことが示されたから,部分集合の定義により,\([(左辺)\subset(右辺)]\) が成り立つ.
 次に,\( (右辺)\subset(左辺)\) を示す.\(x\in{}(A\cup{}B)\cap(A\cup{}C)\) と仮定する.\(x\in{}A\) の場合と \(x\notin{}A\) の場合とに分けて考える.

(i) \(x\in{}A\) の場合

 和集合の定義から,ただちに \(x\in{}A\cup(B\cap{}C)\) である.

(ii) \(x\notin{}A\) の場合

 \(x\in(A\cup{}B)\cap(A\cup{}C)\) であるので,\(x\in{}A\cup{}B\) かつ \(x\in{}A\cup{}C\) である.ここで,\(x\notin{}A\) より,\(x\in{}B\) かつ \(x\in{}C\) である.したがって,\(x\in{}B\cap{}C\) であり,和集合の定義から\(x\in{}A\cup(B\cap{}C)\) が成立.

 以上により,\([x\in{}(右辺)\Rightarrow{}x\in(左辺)]¥ \)であるので,部分集合の定義より,\( [(右辺)\subset{}(左辺)]\) である.
 これにより,「\( (左辺)\subset{}(右辺) \) かつ \( (右辺)\subset{}(左辺) \)」が示されたので,\( (左辺)=(右辺)\) である.(証明終)

\( (4)\) の証明

 \( (3)\) の証明はかなり詳しく書いたので,こちらは簡潔に書いてみよう.

$$\begin{align}
x\in{}A\cap(B\cup{}C)&\Leftrightarrow{}x\in{}A\ かつ\ x\in{}B\cup{}C\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A\ かつ\ (x\in{}B\ または\ x\in{}C)\\
&\Leftrightarrow{}[x\in{}A\ かつ\ x\in{}B]\ または\ [x\in{}A\ かつ\ x\in{}C]\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A\cap{}B\ または\ x\in{}A\cap{}C\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}(A\cap{}B)\cup(A\cap{}C)      (証明終)\\
\end{align}$$

 2行目から3行目に行く際に,少し論理の飛躍があるのがわかるだろうか?この飛躍を埋めようと思うと,場合分けを用いて2行目と3行目が同値であることを丁寧に示していくことになる.

例 2.2

 \(A=\{1,2,3\}, B=\{2,3,4,6\}, C=\{3,6,9\}\) とする.このとき,
$$\begin{alignat}{1}
A\cup{}(B\cup{}C) &=(A\cup{}B)\cup{}C\  &=\{1,2,3,4,6,9\}\\
A\cap{}(B\cap{}C) &=(A\cap{}B)\cap{}C\  &=\{3\}\\
A\cup{}(B\cap{}C) &=(A\cup{}B)\cap(A\cup{}C)\  &=\{1,2,3,6\}\\
A\cap{}(B\cup{}C) &=(A\cap{}B)\cup(A\cap{}C)\  &=\{2,3\}
\end{alignat}$$となっている.

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 定理 2.3 の\( (4)\) の証明ような論理の飛躍が,いわゆる,数学の本の「行間」である.「行間」が大きすぎると(特に初学者に)非常にわかりにくい文章になるが,「行間」の全くない文は,\( (3)\)の証明のように冗長になり,逆にわかりにくくなったりもする.3) 行間のない証明は,論理的推論の過程をまったく省略せず言葉を尽くしているという意味で,逐語的な証明,と呼ばれることもある.証明が追えなくなった時に書いてみると,どこがわからなくなっているのか発見しやすかったり,理解しやすくなったりすることも多い.
 

 したがって,文章に多少の行間を含むことは避けられないと思うので,今後,特に注意することなく「行間」を含む文章を書くことがある.注意深く「行間」を埋めながら読んでいくことは,とてもよい演習になることであろう.

\(\ \)

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References   [ + ]

1.  \(\stackrel{\mathrm{def}}{=},\stackrel{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}\)といった記号は,定義を示すときに「導出されたものではない」ということがわかるように使われる.def は,definition の頭の def である.
2.  差集合を表すのに,\(A-B\) ではなく,\(A\setminus{}B\)が使われることもある.
3.  行間のない証明は,論理的推論の過程をまったく省略せず言葉を尽くしているという意味で,逐語的な証明,と呼ばれることもある.証明が追えなくなった時に書いてみると,どこがわからなくなっているのか発見しやすかったり,理解しやすくなったりすることも多い.