「集合と写像」3.集合の演算に関する諸定理

3.集合の演算に関する諸定理

 前回は書ききれなかったものを紹介する.以下で登場する \(A,B,C\) は集合,\(\emptyset\ \)は空集合である.

定理 3.1 空集合を用いた演算

\(\emptyset\cup{}A=A\tag{1}\)
\(\emptyset\cap{}A=\emptyset\tag{2}\)
\(\emptyset{}-A=\emptyset\tag{3}\)
\(A-\emptyset=A\tag{4}\)
\(A-A=\emptyset\tag{5}\)

証明

\( (1) \) の証明
$$\begin{align}
x\in{}\emptyset\cup{}A
&\Leftrightarrow{}x\in{}\emptyset\ または\ x\in{}A\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A
\end{align}$$
\( (2) \) の証明
$$\begin{align}
x\in{}\emptyset\cap{}A
&\Leftrightarrow{}x\in{}\emptyset\ かつ\ x\in{}A\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}\emptyset\ 
\end{align}$$
\( (3)\) の証明
$$\begin{align}
x\in{}\emptyset{}-A
&\Leftrightarrow{}x\in{}\emptyset\ かつ\ x\notin{}A\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}\emptyset
\end{align}$$
\( (4) \) の証明
$$\begin{align}
x\in{}A-\emptyset
&\Leftrightarrow{}x\in{}A\ かつ\ x\notin{}\emptyset\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}A
\end{align}$$
\( (5) \) の証明
$$\begin{align}
x\in{}A-A
&\Leftrightarrow{}x\in{}A\ かつ\ x\notin{}A\\
&\Leftrightarrow{}x\in{}\emptyset
\end{align}$$

(証明終)

 以上の証明では,命題「\(P\Rightarrow{}Q\)」において条件 \(P\) が成立しないなら命題は真であることを何度も用いている.少しわかりにくいと思うが,丁寧に論理を追ってみて欲しい.

定理 3.2

\(A\cap{}B\subset{}A\tag{6}\)
\(A\cup{}B\supset{}A\tag{7}\)

証明

\( (6)\) の証明
$$\begin{align}
x\in{}A\cap{}B&\Rightarrow{}x\in{}A\ かつ\ x\in{}B\\
&\Rightarrow{}x\in{}A
\end{align}$$
\( (7) \) の証明
$$\begin{align}
x\in{}A&\Rightarrow{}x\in{}A\ または\ x\in{}B\\
&\Rightarrow{}x\in{}A\cup{}B
\end{align}$$

(証明終)

 \(A\subset{}B\) を証明するには,部分集合の定義から\(x\in{}A\Rightarrow{}x\in{}B\) を証明すればよい,ということを思い出そう.

定理 3.3 部分集合であるための必要十分条件

 以下は全て同値

\(A\subset{}B\tag{8}\)
\(A\cup{}B=B\tag{9}\)
\(A\cap{}B=A\tag{10}\)
\(A-B=\emptyset\tag{11}\)
\(A\cup{}(B-A)=B\tag{12}\)

証明

 \( (8)\Rightarrow(9), (9)\Rightarrow(10), (10)\Rightarrow(11), (11)\Rightarrow(12), (12)\Rightarrow(8)\) をそれぞれ示せばよい.

\( (8)\Rightarrow(9)\)

 \(A\subset{}B\) とする.
 まず,\(A\cup{}B\subset{}B\)を示す.\(x\in{}A\ \)または \(x\in{}B\) だとすると,\(x\in{}A\) であるとき \(x\in{}B\) なのだから,必ず \(x\in{}B\) が成立する.
 \(B\subset{}A\cup{}B\) は,定理 3.2 により成立する.以上より,\(A\cup{}B=B\).すなわち,\( (8)\) を仮定すると,\( (9) \) が成立する.

\( (9)\Rightarrow(10)\)

 \( A\cup{}B=B \) を仮定する.
 \(A\cap{}B\subset{}A\) は定理 3.2 より成り立つので,\(A\subset{}A\cap{}B\) を示せばよい.
 \(x\in{}A\) と仮定する.このとき,定理 3.2 より \(x\in{}A\cup{}B\) であり,\( A\cup{}B=B \)を仮定しているので,\(x\in{}B\) である.すなわち,\(x\in{}A\) かつ\(x\in{}B\) が,したがって\(\ x\in{}A\cap{}B\ \)が成立している.

\( (10)\Rightarrow(11)\)

 \(A\cap{}B=A\) を仮定する.このとき,\(A-B=\emptyset\),すなわち,いかなる「モノ」\(x\ \)に対しても\(\ x\notin{}A-B\ \)であることを示せばよい.\(A\ \)が集合であるから,\(x\in{}A\)か\(x\notin{}A\)のどちらか一方が,そして一方のみが成り立つので,場合分けして考える.

 \(x\notin{}A\) なら,\(\ x\notin{}A-B\ \)である.
 \(x\in{}A\ \)なら,仮定により\(A\subset{}A\cap{}B\) であるので,\(x\in{}B\) である.したがって,[\(x\in{}A\ \)かつ\(\ x\notin{}B\)]は成立しないので,\(x\notin{}A-B\) である.

\( (11)\Rightarrow(12)\)

 \(A-B=\emptyset\ \)を仮定する.\( (12)\ \)を示すために,\(A\cup{}(B-A)\subset{}B\ \)かつ\(\ B\subset{}A\cup{}(B-A)\ \)であることを示せばよい.

 まず,\(A\cup{}(B-A)\subset{}B\ \)を示す.\(x\in{}A\cup{}(B-A)\ \)と仮定する.\(x\in{}A\ \)であるとき,もし\(x\notin{}B\) であるならば\(\ x\in{}A-B\ \)であり,仮定である\(\ A-B=\emptyset\ \)に矛盾するので,\(x\in{}B\ \)である.これより,\(x\in{}A\) ならば\(\ x\in{}B\ \)である.
 \(x\in(B-A)\ \)ならば,定義から \(x\in{}B\) である.以上により,\(A\cup{}(B-A)\subset{}B\ \)である.

 次に,\(\ B\subset{}A\cup{}(B-A)\ \)を示す.\(x\in{}B\ \)とする.\(x\in{}A\ \)または\(\ x\notin{}A\ \)のどちらか一方が,そして一方のみが成り立つ.もし\(\ x\in{}A\ \)ならば,\(\ x\in{}A\cup{}(B-A)\ \)である.もし\(\ x\notin{}A\ \)ならば,\(x\in{}(B-A)\ \)であるので\(\ x\in{}A\cup{}(B-A)\ \)である.いずれにせよ,\(x\in{}B\ \)ならば\(\ x\in{}A\cup{}(B-A)\ \)である.すなわち,\(B\subset{}A\cup{}(B-A)\ \)である.

\( (12)\Rightarrow(8)\)

 \(A\cup{}(B-A)=B\ \)とする.
 \(x\in{}A\) を仮定する.このとき,定理 3.2 により,\(x\in{}A\cup{}(B-A)\ \)である.仮定により\(\ A\cup{}(B-A)\subset{}B\ \)であるので,\(x\in{}B\) である.したがって,[\(x\in{}A\Leftrightarrow{}x\in{}B\)] すなわち [\(A\subset{}B\)] である.

(証明終)

例 3.1 定理 3.3 に関する例

 \(A=\{1,2,3\}, B=\{1,2,3,4,5\}\ \)とする.このとき,\(A\subset{}B\ \)であり,
$$\begin{alignat}{1}
A\cup{}B&=\{1,2,3,4,5\}&=B\\
A\cap{}B&=\{1,2,3\}&=A\\
A-B&=\{1,2,3\}-\{1,2,3,4,5\}&=\emptyset\\
A\cup{}(B-A)&=\{1,2,3\}\cup{}\{4,5\}&=\{1,2,3,4,5\}=B\\
\end{alignat}$$

定理 3.4 ド・モルガンの法則

\(A-(B\cap{}C)=(A-B)\cup(A-C)\tag{13}\)
\(A-(B\cup{}C)=(A-B)\cap(A-C)\tag{14}\)

証明

\( (13)\ \)の証明

\(A-(B\cap{}C)\subset{}(A-B)\cup(A-C)\ \)の証明

 \(x\in{}A-(B\cap{}C)\ \)と仮定する.このとき,\(x\in{}A\ \)が成立している.また,\(x\notin{}B\cap{}C\ \)であるので,\(x\in{}B\cap{}C\ \)でない,すなわち,\(x\notin{}B, x\notin{}C\ \)の少なくとも一方が成り立つ.したがって,\(x\in{}A\ \)と合わせて,\(x\in{}(A-B)\ \)および\(\ x\in{}(A-C)\ \)の少なくとも一方が成り立つ.これより,\(x\in{}(A-B)\cup(A-C)\ \)である.

\({}(A-B)\cup(A-C)\subset{}A-(B\cap{}C)\ \)の証明

 \(x\in{}(A-B)\cup(A-C)\ \)と仮定する.
 もし\(\ x\in{}(A-B)\ \)であれば,\(x\in{}A\ \)であり,かつ\(x\notin{}B\ \)である.このとき,\(x\notin{}B\)により,\(x\notin{}B\cap{}C\ \)であるので,\(x\in{}A-(B\cap{}C)\)である.
 もし\(x\in{}(A-C)\ \)であれば,\(x\in{}A\ \)であり,かつ\(x\notin{}C\ \)である.このとき,\(x\notin{}C\)により,\(x\notin{}B\cap{}C\ \)であるので,\(x\in{}A-(B\cap{}C)\)である.

\( (14)\ \)の証明

\(A-(B\cup{}C)\subset{}(A-B)\cap(A-C)\ \)の証明

 \(x\in{}A-(B\cup{}C)\ \)とする.このとき,\(x\in{}A\ \)である.また,\(x\notin{}B\cup{}C\ \)であるので,\(x\in{}B\cup{}C\ \)でなく,\(x\in{}B\ \)も\(\ x\in{}C\ \)も成立していない.すなわち,\(x\notin{}B\ \)かつ\(\ x\notin{}C\ \)である.\(x\in{}A\ \)であることと合わせると,\(x\in{}(A-B)\ \)かつ\(\ x\in{}(A-C)\ \)である.したがって,\(x\in{}(A-B)\cap(A-C)\).

\({}(A-B)\cap(A-C)\subset{}A-(B\cup{}C)\ \)の証明

 \(x\in{}(A-B)\cap(A-C)\ \)とする.このとき,\(x\in{}(A-B)\ \)かつ\(\ x\in{}(A-C)\ \)である.すなわち,[\(x\in{}A\ \)かつ\(\ x\notin{}B\)] かつ [\(x\in{}A\ \)かつ\(\ x\notin{}C\)]である.したがって,[\(x\in{}A\)] かつ [\(x\notin{}B\ \)かつ\(\ x\notin{}C\)] である.ここで,[\(x\notin{}B\ \)かつ\(\ x\notin{}C\)] であるので,\(x\in{}B\ \)も\(\ x\in{}C\ \)も成立していない.よって,\(x\notin{}B\cup{}C\ \)である.これと \(x\in{}A\) より,[\(x\in{}A\ \)かつ\(\ x\notin{}B\cup{}C\)],すなわち\(\ x\in{}A-(B\cup{}C)\ \)である.

(証明終)

例 3.2 ド・モルガンの法則に関する例

 \(A=\{1,2,3,4\}, B=\{1,2\}, C=\{2,3\}\ \)とする.このとき,
$$\begin{alignat}{1}
A-(B\cap{}C)&=\{1,2,3,4\}-\{2\}&=\{1,3,4\}\\
(A-B)\cup{}(A-C)&=\{3,4\}\cup{}\{1,4\}&=\{1,3,4\}\\
\end{alignat}$$
より,たしかに \(A-(B\cap{}C)=(A-B)\cup{}(A-C)\) が成り立っている.同様に,
$$\begin{alignat}{1}
A-(B\cup{}C)&=\{1,2,3,4\}-\{1,2,3\}&=\{4\}\\
(A-B)\cap{}(A-C)&=\{3,4\}\cap{}\{1,4\}&=\{4\}\\
\end{alignat}$$
より,たしかに \(A-(B\cup{}C)=(A-B)\cap(A-C)\ \)が成り立っている.

\(\ \)

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