「集合と写像」4.集合族,補集合

 この記事では集合族と補集合について解説を行う.また,それに関連してべき集合や添字付けられた集合族についても解説する.

集合族

定義 4.1 集合族

 各元が集合であるような集合のことを,集合族という.

例 4.2 集合族の簡単な例

 \(A\) を,以下のような集合とすれば,\(A\) は集合族である.
$$A=\{\{1\},\ \{2\}\}$$

定義 4.3 べき集合

 集合 \(A\) の部分集合全体の集合,すなわち
$$\{X\ |\ X\subset{}A\}$$のことを,\(A\) のべき集合1)このべきを漢字で書くと冪である.巾と略記されることもある. という.これは,元が集合なので,集合族の例となっている.\(A\) のべき集合のことを,
$$\mathfrak{P}{}(A),\ \mathcal{P}(A), P(A), 2^{A}$$
などで表す2)\(\mathfrak{P}\) は,旧ドイツ文字,フラクトゥールの P の大文字.\(2^{A}\) という記法は,\(A\) の各元に0と1(〇と×でも,2つあればなんでもよい) のうちどちらかを対応させることによりべき集合を決定できることによる3)あとででてくる写像を使うと,写像 \(f:\{0,1\}\to{}A\) と \(\mathfrak{P}(A)\) とが一対一に対応する,ということである.

例 4.4 べき集合の例

 たとえば,\(A,\ B\) を$$\begin{align}
A&=\{1\}\\
B&=\{\emptyset, \{1\}\}
\end{align}$$
とすれば,$$B=\mathfrak{P}(A)$$である.

定義 4.5 添字付けられた集合族

 \(\Lambda\)4)ギリシャ文字のラムダの大文字 を集合とする.\(\Lambda\) の各元 \(\lambda\)5)ギリシャ文字のラムダの小文字 に対して集合 \(A_{\lambda}\) が対応しているとする.このとき,\(A_{\lambda}\) の集まり,すなわち$$\{A_{\lambda}\ |\ \lambda\in{}\Lambda\}$$
のことを (\(\Lambda\) によって)添字付けられた集合族といい,$$
(A_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$$と書く.

例 4.6 添字付けられた集合族の例

 \(n\in\mathbb{N}\) に対し,\(A_{n}=\{n\}\) とする.先の定義で出てきた \(\lambda\) は \(n\) に,\(\Lambda\) は \(\mathbb{N}\) に対応している.このとき,$$(A_{n})_{n\in\mathbb{N}}=\{\{1\},\ \{2\},\ \{3\},\ \cdots\}$$である.さらに,$$(A_{n})_{n\in\mathbb{N}}\subset\mathfrak{P}(\mathbb{N})$$となっている.



集合族に対する \(\bigcap,\ \bigcup\) 

定義 4.7 集合族の共通部分,和集合

 集合族の共通部分の記号 \(\bigcap\) ,和集合の記号 \(\bigcup\) をそれぞれ次のように定義する.

$$\begin{align}
\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}&=\{x\ |\ \forall{}\lambda\in\Lambda,\ x\in{}A_{\lambda}\}\\{}
\ {}\\{}
\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}&=\{x\ |\ \exists{}\lambda\in\Lambda,\ x\in{}A_{\lambda}\}\\{}
\end{align}$$

 \(\forall\) は「任意の」という意味で,英語の for all と同じ意味である.\(\exists\) は「ある○○があって」といういみで,英語の there exists the ○○ と同じ意味である(冠詞はまちがえているかも).くわしくは,便利な記号を参照.また,\(\mathbb{N}\) の部分集合などで誤解を生まない場合には,\(\sum\) と同じように

$$\begin{align}
\bigcap_{k=1}^{n}A_{k},&\ \ \bigcup_{k=1}^{n}A_{k}\\{}
\ {}\\{}
\bigcap_{n=1}^{\infty}A_{n},&\ \ \bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n}\\{}
\end{align}$$

といった書き方をすることも多い.

例 4.8 添字付けられた集合族の共通部分,和集合の例

 \(n\in\mathbb{N}\) に対し,\(A_{n}=\{x\in\mathbb{N}\ |\ 1\leq{}x\leq{}n\}\) とする.これにより,集合族 \({}(A_{n})_{n\in\mathbb{N}}\) を考えることができる.この集合族 \({}(A_{n})_{n\in\mathbb{N}}\) に対して,

$$\begin{align}
\bigcap_{n\in\mathbb{N}}A_{n}&=\{1\}\\{}
\ \\{}
\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_{n}&=\mathbb{N}\\{}
\end{align}$$

定理 4.9

 集合族の共通部分,和集合を用いた集合同士の演算について,以下が成立する.

\(\displaystyle\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\cup{}B=\bigcap_{\lambda\in\Lambda}\left(A_{\lambda}\cup{}B\right)\tag{1}\)
\(\displaystyle\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\cap{}B=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}\left(A_{\lambda}\cap{}B\right)\tag{2}\)

証明

\({}(1)\) の証明

\({}(左辺)\subset(右辺)\)

 \(x\in{}\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\cup{}B\) と仮定する.\(x\in{}\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\)のときと,\(x\in{}B\) のときとに場合分けして考える.

 \(x\in{}\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\)のとき,[\(\forall{}\lambda\in\Lambda,\ x\in{}A_{\lambda}\)] が成立しているので,[\(\forall{}\lambda\in\Lambda,\ x\in{}A_{\lambda}\cup{}B\)]も成立している.したがって,\(x\in{}\bigcap_{\lambda\in\Lambda}\left(A_{\lambda}\cup{}B\right)\)である.

 \(x\in{}B\) のとき,[\(\forall\lambda\in\Lambda,\ x\in{}A_{\lambda}\cup{}B\)] が成立するので,\(x\in{}\bigcap_{\lambda\in\Lambda}\left(A_{\lambda}\cup{}B\right)\)である.

 いずれの場合も \(x\in{}\bigcap_{\lambda\in\Lambda}\left(A_{\lambda}\cup{}B\right)\) なので,\({}(左辺)\subset(右辺)\)

\({}(右辺)\subset{}(左辺)\)

 \(x\in\bigcap_{\lambda\in\Lambda}\left(A_{\lambda}\cup{}B\right)\) と仮定する.\(x\in{}B\) のときと \(x\notin{}B\) のときとに場合分けして考える.

 \(x\in{}B\) のとき,\(x\in\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\cup{}B\) は,和集合の定義から直ちに得られる.

 \(x\notin{}B\) のとき,[\(\forall\lambda\in\Lambda,\ x\in{}A_{\lambda}\cup{}B\)] であるが \(\lambda\) をどう選ぼうと\(x\notin{}B\) なので,[\(\forall\lambda\in\Lambda,\ x\in{}A_{\lambda}\)] が成立する.したがって,\(x\in\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\cup{}B\) である.

\({}(2)\) の証明

$$\begin{align}
x\in{}\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\cap{}B
&\Leftrightarrow{}x\in\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\ かつ\ x\in{}B\\
&\Leftrightarrow{}[\exists\lambda\in\Lambda,\ x\in{}A_{\lambda}] かつ x\in{}B\\
&\Leftrightarrow{}\exists\lambda\in\Lambda,\ x\in{}A_{\lambda}\cap{}B\\
&\Leftrightarrow{}\bigcup_{\lambda\in\Lambda}\left(A_{\lambda}\cap{}B\right)
\end{align}$$

(証明終)



補集合

 この記事の最後に,補集合の定義,そして,補集合を用いたド・モルガンの法則の別表記を紹介する.

定義 4.10 補集合

 ある集合 \(X\) が与えられていて,いつも \(X\) の部分集合を考えているとしよう6)このような状況は,空間を考えているときによく起こる.例えば,\(xy\)平面の各点の集合 \(X\) とするような状況が考えられる..このとき,与えられた集合 \(A\) に対し,\(X-A\) を集合 \(A\) の(\(X\)に関する)補集合といい,$$A^{c}$$と書き表す.また,\(X\) を全体集合,あるいは普遍集合という.

例 4.11 補集合の例

 \(X=\mathbb{N}\) とする.正の偶数全体の集合を \(A\) とし,正の奇数全体の集合を \(B\) とする.このとき,
$$A^{c}=B\\B^{c}=A$$である.

定理 4.12 補集合の補集合

 補集合の補集合はもとの集合に一致する.ほとんど明らかなので,証明は書かない.$$(A^{c})^{c}=A$$

定理 4.13 ド・モルガンの法則

 前の記事の定理 3.4 で以下の等式を証明した.

\(A-(B\cap{}C)=(A-B)\cup(A-C)\)
\(A-(B\cup{}C)=(A-B)\cap(A-C)\)

ここで,\(A\) を全体集合 \(X\) に,\(B,\ C\) をそれぞれ \(A,\ B\) に置き換えると,以下のようになる.

\(X-(A\cap{}B)=(X-A)\cup(X-B)\)
\(X-(A\cup{}B)=(X-A)\cap(X-B)\)

これは,補集合の記号を使うと,さらに,以下のように書き換えられる.

\({}(A\cap{}B)^{c}=A^{c}\cup{}B^{c}\)
\({}(A\cup{}B)^{c}=A^{c}\cap{}B^{c}\)

これもまた,ド・モルガンの法則と呼ばれる.また,一般の集合族について,

\(\displaystyle\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)^c=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}^c\)
\(\ \)
\(\displaystyle\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)^c=\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}^c\)

例 4.14 例 3.2 の書き換え

 例 3.2 とほとんど同様に \(X=\{1,2,3,4\}, A=\{1,2\}, B=\{2,3\}\ \)とする(記号を入れ替えただけ).ここで,
$$\begin{alignat}{1}
&(A\cap{}B)^{c}&=\{2\}^{c}&=\{1,3,4\}\\
A^{c}\cup{}B^{c}&=\{1,2\}^{c}\cup{}\{2,3\}^{c}&=\{3,4\}\cup\{1,4\}&=\{1,3,4\}\\
\end{alignat}$$および,
$$\begin{alignat}{1}
&(A\cup{}B)^{c}&=\{1,2,3\}^{c}&=\{4\}\\
A^{c}\cap{}B^{c}&=\{1,2\}^{c}\cap{}\{2,3\}^{c}&=\{3,4\}\cap\{1,4\}&=\{4\}\\
\end{alignat}$$が成り立っている.

\(\ \)

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References   [ + ]

1. このべきを漢字で書くと冪である.巾と略記されることもある.
2. \(\mathfrak{P}\) は,旧ドイツ文字,フラクトゥールの P の大文字
3. あとででてくる写像を使うと,写像 \(f:\{0,1\}\to{}A\) と \(\mathfrak{P}(A)\) とが一対一に対応する,ということである.
4. ギリシャ文字のラムダの大文字
5. ギリシャ文字のラムダの小文字
6. このような状況は,空間を考えているときによく起こる.例えば,\(xy\)平面の各点の集合 \(X\) とするような状況が考えられる.