「微分積分学」2.有界単調数列の収束

2.有界単調数列の収束

 前の記事から,実数の連続性を述べるものである,以下の6つの定理が同値であることの証明や必要な諸概念の定義を行っており,前の記事では \({}(\mathrm{I})\Rightarrow(\mathrm{II})\) を示した.

$$\begin{align}
(\mathrm{I}) &:デデキントの定理\\
(\mathrm{II}) &:ワイエルシュトラスの定理\\
(\mathrm{III}) &:有界で単調な数列は収束する\\
(\mathrm{IV}) &:区間縮小法とアルキメデスの原理\\
(\mathrm{V}) &:ボルツァーノ – ワイエルシュトラスの定理\\
(\mathrm{VI}) &:ハイネ – ボレルの被覆定理
\end{align}
$$

 この記事では \({}(\mathrm{II})\Rightarrow(\mathrm{III})\) を証明し,その例として,ネイピア数 \(e\) の極限が存在することを示す.

上限と下限,有界の定義の復習

 前の記事で定義した上限,下限,有界の定義は以下のようなものであった.

定義 2.1 上界,下界,有界

 \(\mathbb{R}\) の空でない部分集合 \(A\) が与えられているとする.このとき,実数 \(\alpha\) が
$$\forall{}a\in{}A,a<\alpha$$
を満たすとき,\(\alpha\) は\(\ A\ \)の上界であるという.下界は,不等号の向きを逆にして定義される.

 また,\(A\) が上界を少なくともひとつ持つとき,\(A\) は上に有界であるという.同様に,下界を少なくともひとつ持つとき,下に有界であるという.上にも下にも有界であるとき,単に,有界であるという.

定義 2.2 上に有界,上限

 \(\mathbb{R}\) の空でない部分集合 \(A\) が上に有界であるとき,上界全体の集合の最小数を上限といい,下に有界であるとき,下界全体の集合の最大数を下限という.

有界かつ単調な数列の収束の証明

 デデキントの定理 \({}(\mathrm{I})\) を仮定すれば上限,下限の存在(ワイエルシュトラスの定理\({}(\mathrm{II})\))がいえるのだった.これから\({}(\mathrm{II})\) を仮定して有界な数列の収束を示すのだが,その前に,上限,下限に関する重要な性質を示しておく.

補題 2.3 

 \(\mathbb{R}\) の空でない部分集合 \(A\) が与えられているとする.このとき,\(A\) の上界 \(\alpha\) について,以下は同値.なお,下限にも(不等号の向きを逆にしただけの)同様の性質がある.

$$\begin{align}
1.&\alpha\ が\ A\ の上限である\\
2.&\forall{}\varepsilon>0,\exists{}a\in{}A\ \ \ \mathrm{s.t.}\ \ \ \alpha-\varepsilon<a\leq{}\alpha\end{align}$$

証明

上限についてのみ証明を記す.

1\(\Rightarrow\)2

 背理法を使う.ある \(\varepsilon\) に対し,\(\alpha-\varepsilon<a\leq\alpha\) なる \(A\) の元 \(a\) がないとする.このとき,\(\alpha\) は \(A\) の上限なので,任意の \(A\) の元以上であることが分かっている.したがって,任意の \(A\) の元 \(a\) に対し,

[\(a\leq\alpha-\varepsilon\) または \(\alpha<a\)]かつ\(a\leq\alpha\)

 すなわち,$$a\leq\alpha-\varepsilon$$が成立している.これは,\(\alpha\) が最小の上界であることに矛盾する.

1\(\Leftarrow\)2

 \(\alpha\) は \(A\) の上界である.\(\alpha\) より小さい任意の数が \(A\) の上界でないことを示せばよい.

 \(\alpha>r\) なる実数 \(r\) を任意に与える.この時,\(\alpha-r=\varepsilon\) とおくと,仮定から

\(\alpha-\varepsilon<a\leq\alpha\)

なる \(A\) の元 \(a\) がある.この \(a\) に対し,特に \(\alpha-\varepsilon<a\) であり,また,\(\varepsilon\) の置き方から \(\alpha-\varepsilon=r\) なので,

\(r<a\)

が成り立っている.よって,\(r\) は \(A\) の上界ではない.

 (証明終)

 上記の補題は上限が「最小の」上界であることの言い換えになっていることが,式の意味を考えればお分かりいただけると思う.これを使い,\(\mathrm{III}\) の有界かつ単調な数列の収束を示す.その前に,「単調」という言葉の定義を述べておこう.

定義 2.4 単調な数列

 数列 \(\{a_{n}\}_{n=1}^{\infty}\) が与えられているとする(上下の添字は,数列の項がどこからどこまであるのかを示す).\(\{a_{n}\}\) の各項が以下を満たすとき,$$n<m\Rightarrow{}a_{n}<a_{m}$$数列 \(\{a_{n}\}\) は(狭義)単調増加であるという.また,$$n<m\Rightarrow{}a_{n}\leq{}a_{m}$$であるとき,数列 \(\{a_{n}\}\) は(広義)単調増加であるという.このサイトでは,単に単調増加といった場合には,広義単調増加をさすものとする.
 

 単調減少も数列の項の間の不等号を逆にするだけでまったく同様に定義され,単調増加であるか,または単調減少であるような数列を,単に,単調な数列,単調数列,などという.

 これで,ようやく定理 \(\mathrm{(III)}\) を証明するための準備が整った.

定理 2.4 \(\mathrm{(III)}\) 有界かつ単調な数列の収束

 数列 \(\{a_{n}\}_{n=1}^{\infty}\) が与えられているとする. さらに,数列 \(\{a_{n}\}\) が上に有界で単調増加であるとき,その極限 \(\lim_{n\to\infty}a_{n}\) が存在する.また,下に有界な単調減少する数列についても,その極限が存在する.

証明

上に有界で単調増加の場合についてのみ示す(下に有界で単調減少の場合も,方法は全く同じである).

 集合 \(\{a_n\ |\ n\in\mathbb{N}\}\) を \(A\) とする.\(A\) は \(\mathbb{R}\) の空でない部分集合なので,上限を持つ.それを \(\alpha\) とおく.以下,数列 \(\{a_{n}\}\) が \(\alpha\) に収束することを示す.

 任意に正の数 \(\varepsilon\) を与える.このとき,補題 2.3 より,ある \(A\) の元 \(a_n\) で,\(\alpha-\varepsilon<a_{n}\leq\alpha\) なるものが存在する.この,数列 \(\{a_{n}\}\) の項 \(a_n\) の番号を \(M\) とする.このとき, \(\{a_{n}\}\) は単調増加する数列なので,
$$M<n\Rightarrow{}\alpha-\varepsilon<a_{M}\leq{}a_{n}\leq\alpha$$
が成り立ち,よって,
$$M<n\Rightarrow{}|a_{n}-\alpha|<\varepsilon$$が成り立つ.

(証明終)

 これで,どうして証明できたことになるのか疑問に思う方は,0.極限の定義と\(\ \varepsilon\) – \(\delta\ \)論法(上;\(\varepsilon\ \)- \(N\)  論法)を読んでみて欲しい.

 以上により,有界かつ単調な数列は収束することがわかった.これは,上限まで増え続ける数列が収束する,ということを表現している.

 また,当然のことながら,収束する数列が常に単調なわけではないことを注意しておく.(その一方で,「収束する数列は有界である」は成立している.このことの証明はあとの記事で扱う予定である.)

ネイピア数の収束

例 2.5 ネイピア数 \(e\)

 有界かつ単調な数列の例として,以下のような数列数列 \(\{a_{n}\}\) を考えよう.

$$a_n=\left(1+\frac{1}{n}\right)^{n}$$

この数列が有界で単調な数列であることを示そう.

まず,任意の \(n\) について,\(\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}={}_{n}C_{k}=\frac{n!}{(n-k)!k!}\) として1)\(\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}\) という記号は二項係数と呼ばれ,ここで用いたのと同じ意味でよく使われる.なぜだか知らないが,大学に入って以降は \({}_{n}C_{k}\) という書き方はほとんど見かけなくなった.,\(k\geq{}1\) のとき

$$\begin{align}
\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}\left(\frac{1}{n}\right)^{k}
&=\frac{n!}{(n-k)!k!}\frac{1}{n^{k}}\\
&\leq\frac{1}{k!}\\
&\leq\frac{1}{2^{k-1}}
\end{align}$$

であるので,

$$\begin{align}
a_{n}&=\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}\left(\frac{1}{n}\right)^{k}\\
&=1+\sum_{k=1}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}\left(\frac{1}{n}\right)^{k}\\
&\leq{}1+\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{2^{k-1}}\\
&=1+\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{2^{k}}\\
&\leq{}1+\lim_{n\to\infty}\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{2^{k}}=3
\end{align}$$

となり,上に有界である.さらに,

$$\begin{align}
\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}\left(\frac{1}{n}\right)^{k}
&=\frac{n!}{(n-k)!k!}\frac{1}{n^{k}}\\
&=\frac{1}{k!}\frac{n!}{n^{k}(n-k)!}\\
&=\frac{1}{k!}\cdot\frac{n}{n}\cdot\frac{n-1}{n}\cdot\frac{n-2}{n}\cdot\cdots\cdot\frac{n-k+1}{n}\\
&=\frac{1}{k!}\cdot\left(1-\frac{1}{n}\right)\cdot\left(1-\frac{2}{n}\right)\cdot\cdots\cdot\left(1-\frac{k-1}{n}\right)
\end{align}$$

であるから,

$$\begin{align}
a_{n}&=\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}\left(\frac{1}{n}\right)^{k}\\
&=1+\sum_{k=1}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}\left(\frac{1}{n}\right)^{k}\\
&=1+\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k!}\cdot\left(1-\frac{1}{n}\right)\cdot\left(1-\frac{2}{n}\right)\cdot\cdots\cdot\left(1-\frac{k-1}{n}\right)\\
\end{align}$$

$$\begin{align}
a_{n+1}&=\sum_{k=0}^{n+1}\begin{pmatrix}n+1\\k\end{pmatrix}\left(\frac{1}{n+1}\right)^{k}\\
&=1+\sum_{k=1}^{n+1}\begin{pmatrix}n+1\\k\end{pmatrix}\left(\frac{1}{n+1}\right)^{k}\\
&=1+\sum_{k=1}^{n+1}\frac{1}{k!}\cdot\left(1-\frac{1}{n+1}\right)\cdot\left(1-\frac{2}{n+1}\right)\cdot\cdots\cdot\left(1-\frac{k-1}{n+1}\right)\\
\end{align}$$

となるが,\(\sum\) で足しあげている各項は \(1-k/n<1-k/(n+1)\) より,\(a_{n+1}\) の方が大きく,項数も増えているので$$a_{n}<a_{n+1}$$である.以上により,\(\{a_{n}\}\) は単調増加かつ上に有界である.したがって\(\{a_{n}\}\) は収束する.その極限をネイピア数とよび,\(e\) で表すのである.

 「実数列は有界で単調であれば数列が収束する」という事実は,数列の極限を計算することなく数列が収束するかどうかを判定できて便利であり,定期試験などでよく用いられるので,ここに記しておく.

\(\ \)

前の記事:1.デデキントの切断と上限,下限

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References   [ + ]

1. \(\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}\) という記号は二項係数と呼ばれ,ここで用いたのと同じ意味でよく使われる.なぜだか知らないが,大学に入って以降は \({}_{n}C_{k}\) という書き方はほとんど見かけなくなった.