「微分積分学」3.区間縮小法とアルキメデスの原理

3.区間縮小法とアルキメデスの原理

 2つ前の記事から,実数の連続性を述べるものである,以下の6つの定理が同値であることの証明やそれに必要な諸概念の定義を行っており,これまでの記事で,\(\mathrm{(I)}\Rightarrow\mathrm{(II)}\),\(\mathrm{(II)}\Rightarrow\mathrm{(III)}\)を示した.

\begin{align}
(\mathrm{I}) &:デデキントの定理\notag\\
(\mathrm{II}) &:ワイエルシュトラスの定理\notag\\
(\mathrm{III}) &:有界で単調な数列は収束する\notag\\
(\mathrm{IV}) &:区間縮小法とアルキメデスの原理\notag\\
(\mathrm{V}) &:ボルツァーノ – ワイエルシュトラスの定理\notag\\
(\mathrm{VI}) &:ハイネ – ボレルの被覆定理\notag
\end{align}

 この記事では \(\mathrm{(III)}\Rightarrow\mathrm{(IV)}\) と \(\mathrm{(IV)}\Rightarrow\mathrm{(I)}\) を示す.以下では,有界で単調な数列が収束することは仮定されているとする.

アルキメデスの原理

定理 3.1 アルキメデスの原理

$$\lim_{n\to\infty}{}\frac{1}{n}=0$$

あるいは,

$$任意の正の整数 a,b に対し,ある N\in\mathbb{N} があって\ Nb>a$$

 上記ふたつの主張は同値である.上が成り立つなら,\(b/a>N\) をみたす \(N\) があってそれは求める条件をみたし,下が成り立つなら,\(b=\varepsilon,\ a=1\) とおくことにより \(\varepsilon>1/N\) なる \(N\) の存在がわかり,それより大きい \(n\) については \(\varepsilon>1/n\) である.以下, \(\lim_{n\to\infty}1/n=0\) を \(\mathrm{(III)}\) の有界で単調な数列の収束を用いておこなう.

証明

 証明は,背理法による.\({a_{n}=n}\) なる数列は単調増加である.したがって,有界なら収束する.ここで,\(\{a_{n}\}\) が有界であると仮定し,\(\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha\) とおく.このとき,数列の収束の定義から,ある \(n\in\mathbb{N}\) があって,

$$|\alpha{}-n|<\frac{1}{2}$$

この \(n\) について,

$$\alpha-\frac{1}{2}<n$$

であるので,

$$\alpha+\frac{1}{2}<n+1$$

となる.これは,\(a_{n}\) が \(\alpha\) に収束することと矛盾する.したがって,\(a_{n}\) は発散する.

 任意に \(\varepsilon>0\) を与えたとする.\(a_n\) は発散するので,\(1/\varepsilon\) に対し,\(N>1/\varepsilon\) なる \(N\in\mathbb{N}\) がある.この \(N\) に対し,\(N<n\) ならば,\(1/n<\varepsilon\) であるので,

$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}=0$$

(証明終)

区間縮小法

 区間縮小法とは,おおざっぱには区間を少しずつ「縮小」していくとき,最後には点になる,という意味の主張である.そのため,まずは「区間」とそれに関する記号を定義しておく.

定義 3.2 区間

 まず,以下のように記号を定義する.ただし,\(a<b\)とする.

\( (a,b)=\{\ x\in\mathbb{R}\ |\ a < x < b\ \} \)
\( (a,b]=\{\ x\in\mathbb{R}\ |\ a<x\leq b\ \} \)
\( [a,b)=\{\ x\in\mathbb{R}\ |\ a\leq x<b\ \} \)
\( [a,b]=\{\ x\in\mathbb{R}\ |\ a\leq x\leq b\ \} \)

 以上のような集合を「区間」とよび,\(a,b\) を端点という.また,端点を含むか含まないかに注目し,上から順に,開区間,左半開区間,右半開区間,閉区間,という.また,\(I\) を上記のいずれかにより定められた区間とするとき,その長さ \(b-a\) を \(|I|\) で表す.また,\(a\) が \(-\infty\),\(b\) が \(+\infty\) なることもある.その場合は,任意の実数 \(r\) について \(-\infty<r<+\infty\) として考える.

定理 3.3 区間縮小法

 以下の条件を満たす閉区間の列{\(I_{n}\)}が与えられているとする.

\begin{align}
(\mathrm{i})&:任意の\ n\in\mathbb{N}\ について,I_{n}\supset{}I_{n+1}\notag\\(\mathrm{ii})&:\lim_{n\to\infty}|I_{n}|=0\notag
\end{align}

このとき,ある1点 \(x\in\mathbb{R}\) があって,

\(\displaystyle\bigcap_{n=1}^{\infty}I_{n}=x\)1)ここで,\(I_n\)は数字ではないので,\(\lim_{n\to\infty}I_n=x\)と書くことはできない.なお,\(\bigcap_{n=1}^{\infty}I_n=\{x\ |\ \forall{}n\in\mathbb{N},\ x\in{}I_n\}\) である.

証明

 各区間 \(I_{n}\) 端点を \(a_n,b_n\) とおく.すなわち,\(I_n=[a_n,b_n]\) とおく.このとき,条件\(\mathrm{(i)}\)より数列 \(\{a_n\}\) は単調増加で有界である(各 \(n\) について,\(a_n<b_1\) であり,\([a_n,b_n]\supset[a_{n+1},b_{n+1}]\) なので \(a_n\leq{}a_{n+1}\)).同様に,\(\{b_n\}\) も単調減少で有界である.したがって,\(\{a_n\}\) と \(\{b_n\}\) は共に収束する.その極限をそれぞれ \(\alpha,\beta\) とおく.このとき,条件\(\mathrm{(ii)}\)より任意の \(\varepsilon>0\) に対してある \(n\) があって,

$$0\leq{}\beta-\alpha\leq{}b_n-a_n<\varepsilon$$

であるので,\(\beta-\alpha=0\),すなわち,

$$\beta=\alpha$$

である.ここで,\(x=\alpha(=\beta)\) とおく.このとき,有界単調増加である数列 \(\{a_n\}\) の極限が \(\alpha\) であることから,各 \(n\in\mathbb{N}\) に対し,\(a_n\leq{}x\).同様に,各 \(n\in\mathbb{N}\) に対し \(x\leq{}b_n\).したがって,各\(n\)について \(x\in{}I_n\).

 最後に,\(x\)と異なる任意の実数\(r\)について,ある \(n\in\mathbb{N}\) があって \(r\notin{}I_n\) となることを示せば,証明は完結する.\(r>x\) であると仮定する.このとき,\(\lim_{n\to\infty}b_n=\beta(=x)\) より,ある \(n\in\mathbb{N}\) があって \((r-x)/2>b_n-\beta\) である.この \(n\) に対し,\(r>b_n\) であるので,\(r\notin{}I_n\) である.\(r<x\) の場合は,同様の議論を \(\{a_n\}\) を用いて行うことにより \(r\notin{}I_n\) が示される.

(証明終)

\(\ \)

 ここで,なぜ区間縮小法とアルキメデスの原理が「セット」なのかについて,おおざっぱにではあるが説明を加えておこう.

 大抵の場合,区間縮小法を使ってなにかの極限を求めるようなときには,\(|I_{n+1}|=|I_n|/2\) となるように区間を構成する.このような閉区間の列に区間縮小法を用いるためには \(\lim_{n\to\infty}|I_n|=0\) を示さなければならないが,そのときにアルキメデスの原理を使うことになるのである.なので,ある意味で区間縮小法を用いるときには必然的にアルキメデスの原理にでてきてもらうことになる.だから,これらは「セット」のようなものなのである.

\(\mathrm{(IV)}(区間縮小法とアルキメデスの原理)\Rightarrow\mathrm{(I)}(デデキントの定理)\)

 ここで,これまではデデキントの定理を仮定して論を押し進めてきたが,区間縮小法を使って,デデキントの定理を証明してみよう.

定理 3.4 デデキントの定理

 実数\(\mathbb{R}\)の切断\((A,B)\)が与えられたとする.このとき,以下のうちどちらか一方が,そして一方のみが成立する.

\begin{align}
(\mathrm{i})&:下組\ A\ に最大数があり上組\ B\ に最小数がない\notag\\
(\mathrm{ii})&:\ A\ に最大数がなく\ B\ に最小数がある\notag
\end{align}

証明

 区間縮小法を用いるべく,\(\bigcap_{n=1}^{\infty}I_n\) が \(A\) の最大数か \(B\) の最小数になるように閉区間の列 \(\{I_n\}_{n=1}^{\infty}\) をつくる.

 \(A\) の元 \(a_1\) と \(B\) の元 \(b_1\) を任意に与える.これに対し,

\((a_1+b_1)/2\) が \(A\) に属する場合は \(a_2=(a_1+b_1)/2,b_2=b_1\)

とし,

\((a_1+b_1)/2\) が \(B\) に属する場合は \(a_2=a_1,b_2=(a_1+b_1)/2\)

とする.以下,\(a_n,b_n(n\in\mathbb{N})\) が与えられているとき,

\((a_n+b_n)/2\) が \(A\) の元ならば \(a_{n+1}=(a_n+b_n)/2,b_{n+1}=b_n\)

とし,

\((a_n+b_n)/2\) が \(B\) の元ならば \(a_{n+1}=a_n,\ b_{n+1}=(a_n+b_n)/2\)

とし,

\(I_n=[a_n,b_n]\)

とおく.これにより,区間の列 \(\{I_n\}\) と数列 \(\{a_n\},\ \{b_n\}\) が定まった.このとき,

$$I_n\supset{}I_{n+1}\ \ かつ\ \ \lim_{n\to\infty}|I_n|=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{2^{n-1}}|I_1|=0$$

であるので,区間縮小法により

$$\bigcap_{n=1}^{\infty}I_n:=x\in\mathbb{R}$$

が存在する(:=は,なにかをおくときなどに使う記号).

 このとき,\(x<r\) なる任意の実数 \(r\) について,\(b_n\to{}x\ (n\to\infty)\) よりある \(n\) があって \(b_n<r\) だから \(r\in{}B\) であり,\(r<x\) なる任意の実数 \(r\) について,\(a_n\to{}x\ (n\to\infty)\) よりある \(n\) があって \(r<a_n\) なので,\(r\in{}A\) である.よって,\(x\in{}A\) なら \(x\) は \(A\) の最大数であり,\(x\in{}B\) なら \(x\) は \(B\) の最小数である.いずれにせよ,\(\mathrm{(i),\ (ii)}\)のうちの一方が,そして一方のみが満たされている.

(証明終)

 以上で,\(\mathrm{(I)}\Rightarrow\mathrm{(II)}\Rightarrow\mathrm{(III)}\Rightarrow\mathrm{(IV)}\Rightarrow\mathrm{(I)}\) を証明でき,\(\mathrm{(I)~(IV)}\)が同値であることがわかった.

前の記事:2.有界単調数列の収束

References   [ + ]

1. ここで,\(I_n\)は数字ではないので,\(\lim_{n\to\infty}I_n=x\)と書くことはできない.なお,\(\bigcap_{n=1}^{\infty}I_n=\{x\ |\ \forall{}n\in\mathbb{N},\ x\in{}I_n\}\) である.