「微分積分学」5.開集合と閉集合の諸性質

5.開集合と閉集合の諸性質

 この記事では,ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理やハイネ=ボレルの定理の内容が理解しやすくなると考えたので,開集合や閉集合の様々な性質について触れ,それらになじんでもらおうと思う.

集合の族の和集合,共通部分について

 念のため,文脈的に意味はほぼ明らかだと思うが,以下で使用するいくつかを紹介する.くわしくはここを参照.

定義 5.1 集合の族に関する記号

 各元が集合であるような集合のことを,集合族,集合の族,などという.集合族 \(X\) を与えたとき,ある集合 \(\Lambda\) を与えてその元と \(X\) の元とを一対一に対応させることにより,

$$X=\{A_{\lambda}\mid{}\lambda\in{}\Lambda\}$$

と書ける.このとき,\(X\) を \({}(A_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) とあらわし,\(\Lambda\) を添字集合という.そして,\(X\) の元すべての共通部分と和集合を

\begin{align}
\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}&=\{x\ |\ \forall{}\lambda\in\Lambda,\ x\in{}A_{\lambda}\}\notag\\
\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}&=\{x\ |\ \exists{}\lambda\in\Lambda,\ x\in{}A_{\lambda}\}\notag
\end{align}

とする.\(X\) が有限集合で添字集合として \(\{1,2,\cdots,n\}\) とできるときや,添字集合が \(\mathbb{N}\) などで誤解を生まないような場合には,

$$\bigcap_{k=1}^{n}A_{k},\ \ \bigcup_{k=1}^{n}A_{k},\ \ \bigcap_{n=1}^{\infty}A_{n},\ \ \bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n}$$

といった記号も使う.

開集合と閉集合の諸性質

 以下では,開集合と閉集合の性質の内で重要なものをひとつずつ解説する.

定理 5.2 開集合の特徴づけ

 任意に \(\mathbb{R}\) の部分集合 \(A\) を与えたとする.以下は同値

\begin{align}
(\mathrm{i}):&A\ は開集合である\notag\\
(\mathrm{ii}):&ある開区間の族\ (I_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\ があり,A=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}I_{\lambda}\notag
\end{align}

証明

\(\mathrm{(i)}\Rightarrow{}\mathrm{(ii)}\)

 \(A\) を \(\mathbb{R}\) の開集合とする.\(A\) の各点は内点であるので,\(A\) の任意の点 \(x\) に対し,ある \(\varepsilon_{x}>0\) があって,\(B(x;\varepsilon_{x})=(x-\varepsilon_x,x+\varepsilon_x)\subset{}A\) がなりたつ.そこで \(I_{x}=(x-\varepsilon_{x},x+\varepsilon_{x})\) とする1)  (この注の内容は,特に厳密性を気にする人以外は気にしなくてよい.) この定め方は,若干不明瞭であり,このような定め方をするには選択公理とよばれる仮定を採用しなければならない.(選択公理を用いることなく) \(I_x\) をより厳密に定めるには,以下のようにすればよい.
 任意に選んだ \({}A\) の点 \(x\) に対し,\(\Delta_x=\{\delta\in\mathbb{R}\mid\delta>0\ かつ\ (x-\delta,x+\delta)\subset{}A\}\) とする.\(\Delta_x\) が有界なときは,\(\varepsilon_x=\frac{1}{2}\sup{\Delta_x}\) とし,そうでないときは \(\varepsilon_x=1/2\) とし,\(I_x=(x-\varepsilon_x,x+\varepsilon_x)\) とする.(なお,\(\sup{\Delta_x}\)は\(\Delta_x\)の上限である)

 このとき,\(A\) の任意の点 \(x\) は \(I_x\) に含まれ,任意の \(I_x\) は \(A\) の部分集合であるので,開区間の族 \({}(I_{x})_{x\in{}A}\) に対し,\(A=\bigcup_{x\in{}A}I_{x}\).

\(\ \)

\(\mathrm{(ii)}\Rightarrow{}\mathrm{(i)}\)

 ある開区間の族 \((I_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) があり,\(A=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}I_{\lambda}\) であるとする.

 このとき,\(A\) の点 \(x\) を任意に与える.\(x\) に対し,ある \(\lambda\in\Lambda\) があって,\(x\in{}I_{\lambda}\) である.この \(\lambda\) に対し,ある実数 \(a,b\) があり,\(I_{\lambda}=(a,b)\) である.そこで,

$$\varepsilon=\frac{1}{2}\min{\{x-a,b-x\}}$$

とおくと,\(B(x;\varepsilon)\subset{}A\) である.なお,\(\min\{b-x,\ x-a\}\) は,\(\{b-x,\ x-a\}\) の最小の元を表している .\(x\) は任意に与えた \(A\) の点であったから,任意の \(A\) の点は内点であり,\(A\) は開集合である.

(証明終)

例 5.3 

 \(a<b<c<d\)なる実数 \(a,b,c,d\) が与えられているとする.このとき,\((a,b)\cup(c,d)\)は開集合である.

定理 5.4 閉集合の特徴づけ

 任意に\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)を与えたとする.以下は同値

\begin{align}
(\mathrm{i}):&Aは閉集合である\notag\\
(\mathrm{ii}):&数列\{a_n\}の各項がAの元であり,かつ収束するならば,\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n\in{}A\notag
\end{align}

証明

\(\mathrm{(i)}\Rightarrow{}\mathrm{(ii)}\)

 \(A\) を \(\mathbb{R}\) の閉集合とし,\(\{a_n\}\subset{}A\) が収束するとする.\(\alpha=\lim_{n\to\infty}a_n\) とおく.

 このとき,\(\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha\) より,任意の \(\varepsilon>0\) に対して,ある \(n\in{}\mathbb{N}\) があって \(a_n\in{}B(\alpha;\varepsilon)\) である.さらに,任意の \(n\in{}\mathbb{N}\) について \(a_n\in{}A\) なので,任意の \(\varepsilon>0\) に対して,\(B(\alpha;\varepsilon)\cap{}A\not=\emptyset\) である.

 したがって,\(\alpha\) は \(A\) の境界点か内点のどちらかであり,\(A\) が閉集合であることから \(A\) の点である.

\(\ \)

\(\mathrm{(ii)}\Rightarrow{}\mathrm{(i)}\)

 任意に \(\mathbb{R}\) の部分集合 \(A\) を与えたとする.対偶「各項が \(A\) の元で収束するが,\(A\) の点に収束しない数列\(\{a_n\}\)がある \(\Rightarrow\) \(A\) は閉集合でない」を示す.

 数列 \(\{a_n\}\)(各項が \(A\) の元) で,収束するが,極限が \(A\) の元でないようなものがあったとする.\(\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha\) とおく.このとき,\(\alpha\) は \(A\) の元でない,すなわち,\(A^c\) の元であるので,任意の \(\varepsilon\) に対して \(B(\alpha;\varepsilon)\cap{}A^c\not=\emptyset\).

 さらに,\(\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha\) より,任意の \(\varepsilon>0\) に対してある \(n\in\mathbb{N}\) があって \(a_n\in{}B(\alpha;\varepsilon)\).各 \(a_n\) は \(A\) の元なので,任意の \(\varepsilon>0\) に対し \(B(\alpha;\varepsilon)\cap{}A\not=\emptyset\).

 以上により,任意の \(\varepsilon>0\) に対して,\(B(\alpha;\varepsilon)\cap{}A\not=\emptyset\) かつ \(B(\alpha;\varepsilon)\cap{}A^c\not=\emptyset\) が成り立つ.したがって \(\alpha\) は \(A\) の境界点である.ところが,\(\alpha\) は \(A\) の点ではなく,したがって,\(A\) は境界点全てを含んではいないので,\(A\) は閉集合でない.

(証明終)

 上記の定理の性質 \(\mathrm{(ii)}\) は,\(A\) が空ならば任意の数列 \(\{a_n\}\) に対して仮定が偽であることから,\(A\) が空集合の時は常に成立する.

\(\ \)

 以上により,開集合は開区間の和集合で書ける集合のことであり,閉集合とは収束する点列が自身の点に収束する集合である,ということがわかった.「閉集合内の点列が収束するなら自身の点に収束する」という性質は,境界点をつかった閉集合の定義以上に閉集合の本質を言い表しているともいえる,重要な性質である.

例 5.5

 数列\(\{a_n\}\)が

$$a_n=1-\frac{1}{n}$$

によって定まっているとする.明らかに,各項は\((0,1)\)の元であり,\([0,1]\)の元である.さらに,

$$\lim_{n\to\infty}a_n=1$$

である.このとき,\(1\)は\((0,1)\)には含まれないが\([0,1]\)には含まれている.

\(\ \)

 以下の定理は,閉集合と開集合との関連性を教えてくれる.

定理 5.6

 \(\mathbb{R}\) の部分集合 \(A\) を任意に与えたとする.このとき,以下が成り立つ.
\begin{align}
(\mathrm{i}):&A\ が開集合ならば,A^c\ は閉集合である.\notag\\
(\mathrm{ii}):&A\ が閉集合ならば,A^c\ は開集合である.\notag
\end{align}

証明

\(\mathrm{(i)}\)

 \(A\) を開集合とする.

 \(A^c\) の点 \(x\) を任意に与えたとする.もし \(x\) が \(A^c\) の内点でも境界点でもないとすると,ある \(\varepsilon>0\) があって \(B(x;\varepsilon)\subset{}(A^c)^c=A\) となることになり,これは \(x\) が \(A^c\) の点であることに矛盾する.したがって,\(x\) は \(A^c\) の内点,または境界点である.

 \(A^c\) の内点または境界点である点 \(x\) を任意に与えたとする.\(x\) が \(A^c\) の内点なら,明らかに \(A^c\) の元である.\(x\) が \(A^c\) の境界点であれば,定義から \(A\) の境界点でもあり,\(A\) が開集合であることから \(x\) は \(A\) の元でない,すなわち,\(A^c\) の点である.結局,\(x\) は \(A^c\) の境界点であれ内点であれ,\(A^c\) の元である.

 以上より,\(A^c\) は,自身の内点全てと境界点全てからなる集合と一致するので,閉集合である.

\(\ \)

\(\mathrm{(ii)}\)

 \(A\) を閉集合とする.

 \(A^c\) の点 \(x\) を任意に与える.もし \(x\) が \(A^c\) の内点でないとすると,任意の \(\varepsilon>0\) に対して \(B(x;\varepsilon)\cap{}A\not=\emptyset\) である.したがって,\(x\) は \(A\) の境界点か内点で,\(A\) は閉集合であることから \(x\) は \(A\) の元であり,\(x\in{}a^c\) に矛盾する.以上より,\(x\) は \(A^c\) の内点である.

 また,明らかに,\(A^c\) の任意の内点は \(A^c\) の元である.

 以上より,\(A^c\) は自身の内点全ての集合と一致し,したがって,開集合である.

(証明終)

例 5.7

 開区間\((a,b)\)は開集合であり,その補集合\((-\infty,a]\cup[b,+\infty)\)は閉集合である.

 閉区間\([a,b]\)は開集合であり,その補集合\((-\infty,a)\cup(b,+\infty)\)は開集合である.

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References   [ + ]

1.   (この注の内容は,特に厳密性を気にする人以外は気にしなくてよい.) この定め方は,若干不明瞭であり,このような定め方をするには選択公理とよばれる仮定を採用しなければならない.(選択公理を用いることなく) \(I_x\) をより厳密に定めるには,以下のようにすればよい.
 任意に選んだ \({}A\) の点 \(x\) に対し,\(\Delta_x=\{\delta\in\mathbb{R}\mid\delta>0\ かつ\ (x-\delta,x+\delta)\subset{}A\}\) とする.\(\Delta_x\) が有界なときは,\(\varepsilon_x=\frac{1}{2}\sup{\Delta_x}\) とし,そうでないときは \(\varepsilon_x=1/2\) とし,\(I_x=(x-\varepsilon_x,x+\varepsilon_x)\) とする.(なお,\(\sup{\Delta_x}\)は\(\Delta_x\)の上限である)