「微分積分学」6.ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理

6.ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理

 この記事では,ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理の主張について解説し,証明を行う.証明には,区間縮小法とアルキメデスの原理を用いる.その後,ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理が「実数の連続性」を表す同値な定理の1つであることについて解説する.

 実際,以下の6つの定理が同値であり,\(\mathrm{(I)}\)~\(\mathrm{(IV)}\)が同値であることはこれまでの記事(ここを参照)の中で示している.

 この記事では,\(\mathrm{(III)}\) の有界で単調な数列の収束の証明をボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理を仮定して行うことにより,他の「実数の連続性」を表す定理との同値性を示すことにする.

\begin{align}
(\mathrm{I}) &:デデキントの定理\notag\\
(\mathrm{II}) &:ワイエルシュトラスの定理\notag\\
(\mathrm{III}) &:有界で単調な数列は収束する\notag\\
(\mathrm{IV}) &:区間縮小法とアルキメデスの原理\notag\\
(\mathrm{V}) &:ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理\notag\\
(\mathrm{VI}) &:ハイネ=ボレルの被覆定理\notag
\end{align}

有界な数列と部分列

 まず,ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理の主張を述べる際に使われる「有界な数列」「部分列」について述べる.(有界な数列は他の記事では登場しているが,ここであらためて述べる)

定義 6.1 有界な数列

 数列 \(\{a_n\}\) が有界であるとは,集合 \(\{a_n\mid{}n\in\mathbb{N}\}\) が有界であることをいう.上に有界(あるいは下に有界)な数列といったときも,同様に,集合 \(\{a_n\mid{}n\in\mathbb{N}\}\) が上に有界(下に有界)であることを意味する.

定義 6.2 部分列

 数列 \(\{b_n\}\) が \(\{a_n\}\) の部分列であるとは,任意に自然数 \(k\) を与えたときに何らかの自然数 \(n(k)\) を定めるような関数
$$n:\mathbb{N}\to\mathbb{N}$$
があって,

\begin{align}
{}&任意の自然数\ i,\ j\ について,i<j\Rightarrow{}n(i)<n(j)\notag\\
{}&任意の自然数\ k\ について\ b_k=a_{n(k)}\notag
\end{align}

の両方が成り立つことである1)\(n:\mathbb{N}\to\mathbb{N}\) という書き方や関数という単語については,くわしくは「集合と写像」5を参照.このとき,\(b_k\) を \(a_{n(k)}\) と書くことも多い(\(k\) はもちろん自然数).

 

 部分列,というのは,数列 \(\{a_n\}\) から一部の項を選抜してつくった数列のようなものである.もちろん,\(\{a_n\}\) 自身も \(\{a_n\}\) の部分列である.それも含め,簡単な部分列の例を挙げよう.

例 6.3 部分列

 数列 \(\{a_n\}\) は,\(\{a_n\}\) 自身の部分列である.また,\(\{a_{2n}\}\) や \(\{a_{2n-1}\}\) も \(\{a_n\}\) の部分列である.

 

 有界な数列はいつも収束するとは限らない.これに関して,例をあげよう.

例 6.4

 \(a_n=(-1)^n\)として数列 \(\{a_n\}\) を定めると,\(\{a_n\}\) は,どんな実数にも収束しない.

 ただし,この数列の部分列 \(\{a_{2n}\}\) と \(\{a_{2n-1}\}\) は,それぞれ \(1,-1\) に収束する.

ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理

 例 6.4 においては,有界な数列 \(\{a_n\}\) に収束する部分列があった.より一般の場合はどうだろうか?逆に,収束する部分列で特徴づけられる集合はあるのだろうか?

 この疑問に答えてくれるのが,この記事の目標である「ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理」である.以下では,\(\mathrm{(IV)}\):区間縮小法とアルキメデスの原理を用いた証明を与える.

定理 6.5 ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理 [\(\mathrm{(IV)}\Rightarrow\mathrm{(V)}\)]

 実数 \(\mathbb{R}\) の部分集合 \(A\) について,以下は同値

\begin{align}
(\mathrm{i}):&各項が\ A\ の元であるような任意の数列は,収束する部分列をもつ.\notag\\
(\mathrm{ii}):&A\ は有界である.\notag
\end{align}

証明

\(\mathrm{(i)}\Rightarrow\mathrm{(ii)}\)

 各項が \(A\) の元であるような任意の数列 \(\{a_n\}\) が,収束する部分列をもつと仮定する.\(A\) が有界であることを示す.

 証明は,背理法による.\(A\) は上に有界でないと仮定する.\(A\) は上に有界でないので,
$$A\cap\{x\in\mathbb{R}\mid{}x>n\}\not=\emptyset$$ 
が各 \(n\in\mathbb{N}\) について成立する.つまり,任意の自然数 \(n\) について,\(n\)より大きい \(A\) の元が存在する.そこで,数列 \(\{a_n\}\) を

\begin{align}
・&各項が\ A\ の元で,\notag\\
・&a_n>n\notag
\end{align}

となるようにとることができる2)(厳密さにこだわらないなら全く気にしなくてよいが)ここでは,選択公理とよばれる仮定を使っているので,念のため注意しておく.なお,筆者は,選択公理を使わない証明方法はないであろうと考えている..この数列 \(\{a_n\}\) の任意の部分列 \(\{a_{n(k)}\}\) は,任意の自然数 \(k\) について
$$a_{n(k)}>n(k)>k$$
を満たすので,収束せず,矛盾する.したがって,\(A\)は上に有界である.

 全く同様にして下に有界であることも示されるので,\(A\)は有界である.

\(\mathrm{(ii)}\Rightarrow\mathrm{(i)}\)

 \(A\) が有界ならば,\(A\) はある有界な閉区間の部分集合となるので,各項が有界閉区間 \([a,b]\) の元であるような数列 \(\{a_n\}\) が収束する部分列をもつことをしめせばよい.

 数列 \(\{a_n\}\) の各項が有界閉区間 \([a,b]\) の元であるとする.

 もし,集合 \(\{a_n\mid{}n\in\mathbb{N}\}\)  (\(\{a_n\}\)の全ての項を集めた集合) が有限集合なら,その元 \(\alpha\) で \(a_n=\alpha\) なる自然数 \(n\) が無限個存在するものがある.この \(\alpha\) に対して,\(n(k)\) を,\(a_m=\alpha\) なる自然数 \(m\) の内,\(k\) 番目に大きいものとすると,\(\{a_{n(k)}\}\) は \(\alpha\) に収束する3)以上のような\(n(k)\)の定め方は,\(\mathbb{N}\)の任意の空でない部分集合に最小元が存在するという\(\mathbb{N}\)の性質に基づいている.

 \(\{a_n\mid{}n\in\mathbb{N}\}\) が無限集合であるとする.\(I_0=[a,b]\) とおく.このとき,\([a,\frac{a+b}{2}],[\frac{a+b}{2},b]\) のうち,少なくとも一方は \(\{a_n\mid{}n\in\mathbb{N}\}\) の元を無限個含む.一方のみが無限個含むときは無限個含む方を,両方が無限個含むときは \([a,\frac{a+b}{2}]\) を \(I_1\) とする.以下,\(I_n\) が与えられたとき,全く同様にして \(I_{n+1}\) を決定することにすれば,閉区間の列 \({}(I_n)_{n\in\mathbb{N}}\) がえられる.

 このとき,区間\(I_n\)の幅を\(|I_n|\)と書くことにすれば,(アルキメデスの原理より)
$$\lim_{n\to\infty}|I_n|=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{b-a}{2^n}=0$$
なので,区間縮小法により,全ての \(I_n\) に含まれる実数 \(x\) がただ一つ存在する.以下で,この \(x\) に収束する \(\{a_n\}\) の部分列を構成できることを示せばよい.

 まず,\(n(1)=1\) とする.以下,\(n(k)\) が定まっているとき,\(n(k+1)\) を,自然数 \(m\) で \(a_m\in{}I_k\) なるもののうち,\(n(k)\) より大きい最小のもの,すなわち,

$$n(k+1)=\min\{m\in\mathbb{N}\mid{}m>n(k)かつ\ a_m\in{}I_{k+1}\}$$

として \(n(k)\) を定める4)\(\{m\in\mathbb{N}\mid{}m>n(k)かつ\ a_m\in{}I_{k+1}\}\) は,\(a_m\in{}I_{k+1}\) なる自然数 \(m\) は無限個あることから空集合にならないことに注意.こうすれば,\(k\in\mathbb{N}\) に対し \(a_{n(k)}\in{}I_k\) であるので,\(\displaystyle\lim_{k\to\infty}a_{n(k)}=x\) であり,\(\{a_{n(k)}\}\) は \(\{a_n\}\) の収束する部分列になっている.

(証明終)

 ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理より,有界な数列は収束する部分列をもつことがわかる.これをボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理とするものも多いので,それを系として掲げておく5)系とは,それまでに証明した定理や命題から(ほぼ)明らかな命題のことである.

系 6.6

 有界な数列は,収束する部分列を持つ

 

 また,\(\mathbb{R}\) のある部分集合が閉集合であるための必要十分条件「各項がその集合の元であり,かつ,収束するような任意の数列は,その集合内の点に収束する」(ここを参照)に注目して,次のような形で述べられることも多い.

系 6.7

 実数 \(\mathbb{R}\) の部分集合 \(A\) について,以下は同値

\begin{align}
(\mathrm{i}):&各項が\ A\ の元であるような任意の数列は,A\ の元に収束する部分列をもつ.\notag\\
(\mathrm{ii}):&A\ は有界かつ閉な集合 (以下有界閉集合) である.\notag
\end{align}

 

 つまり,ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理によって,有界閉集合を,数列(すなわち,\(\mathbb{R}\)の点列)によって「特徴づける」ことができる.

 このような有界閉集合の性質を,「点列コンパクト性」という.ハイネ=ボレルの定理との関連で,この名前の意味が明らかになるであろう.

 

 さて,先に述べておいたように,ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理は,実数の連続性を表す同値な定理の一つであり,ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理を用いて \(\mathrm{(I)}~\mathrm{(IV)}\) を証明できる.

 この記事この記事この記事の計3記事の内容を併せれば \(\mathrm{(I)}~\mathrm{(IV)}\) が同値であることは示されているので,以下では \(\mathrm{(III)}\):有界かつ単調な数列の収束  のみを示すことにする.

定理 6.8 有界かつ単調な数列の収束 [\(\mathrm{(V)}\Rightarrow\mathrm{(III)}\)]

証明

 数列 \(\{a_n\}\) を上に有界で単調増加な数列とする.このとき,ある正の数 \(M\) があって任意の自然数 \(n\) について \(a_n<M\) であり,\(a_1\leq{}a_n<M\) となるので,数列 \(\{a_n\}\) は有界な数列である.したがって収束する部分列 \(\{a_{n(k)}\}\) が存在する.それが \(\{a_n\}\) 自身と一致している場合は,明らかに \(\{a_n\}\) も収束する.以下,一致していない場合を調べる.

 \(\displaystyle\lim_{k\to\infty}a_{n(k)}=\alpha\) とおく.もし,\(\alpha<a_m\) なる自然数 \(m\) があれば,\(k>m\)のとき,\(n(k)>k>m\) であるので \(a_{n(k)}\geq{}a_m>\alpha\) となり,\(\{a_{n(k)}\}\) が \(\alpha\) に収束することに反する.

 したがって,任意の自然数 \(m\) について,
$$a_m\leq\alpha$$
が成立する.ここで,\(\{a_{n(k)}\}\) が \(\alpha\) に収束することから,

$$任意の\ \varepsilon>0\ に対して,ある\ K\in\mathbb{N}\ があって,K<k\ ならば\ \alpha-\varepsilon<a_{n(k)}$$

がなりたつ.この \(K\) について,\(n(K+1)\) [これは\(n\cdot(K+1)\)ではないことに注意] に対して,

$$m>n(K+1)\ ならば,\alpha-\varepsilon<a_{n(K+1)}\leq{}a_m(\leq\alpha)$$

がなりたち,したがって \(|a_m-\alpha|<\varepsilon\) が成立する.以上により,
$$任意の\ \varepsilon>0\ に対してある自然数\ N\ があって,n>N\Rightarrow|a_n-\alpha|<\varepsilon$$
が成り立つので,\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha\) であり,\(\{a_n\}\) は収束する.

(証明終)

 これにより,(他の記事と併せれば)\(\mathrm{(I)~(V)}\)が全て同値であることがわかる.

前の記事:5.開集合と閉集合の諸性質

次の記事:7.ハイネ=ボレルの定理

References   [ + ]

1. \(n:\mathbb{N}\to\mathbb{N}\) という書き方や関数という単語については,くわしくは「集合と写像」5を参照
2. (厳密さにこだわらないなら全く気にしなくてよいが)ここでは,選択公理とよばれる仮定を使っているので,念のため注意しておく.なお,筆者は,選択公理を使わない証明方法はないであろうと考えている.
3. 以上のような\(n(k)\)の定め方は,\(\mathbb{N}\)の任意の空でない部分集合に最小元が存在するという\(\mathbb{N}\)の性質に基づいている.
4. \(\{m\in\mathbb{N}\mid{}m>n(k)かつ\ a_m\in{}I_{k+1}\}\) は,\(a_m\in{}I_{k+1}\) なる自然数 \(m\) は無限個あることから空集合にならないことに注意
5. 系とは,それまでに証明した定理や命題から(ほぼ)明らかな命題のことである.