「微分積分学」7.ハイネ=ボレルの被覆定理

7.ハイネ=ボレルの被覆定理

 この記事では,実数の連続性を説明する以下の6つの定理のうち,\(\mathrm{(VI)}\) のハイネ=ボレルの被覆定理の,ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理を用いた証明を行う.

\begin{align}
(\mathrm{I}) &:デデキントの定理\notag\\
(\mathrm{II}) &:ワイエルシュトラスの定理\notag\\
(\mathrm{III}) &:有界で単調な数列は収束する\notag\\
(\mathrm{IV}) &:区間縮小法とアルキメデスの原理\notag\\
(\mathrm{V}) &:ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理\notag\\
(\mathrm{VI}) &:ハイネ=ボレルの被覆定理\notag
\end{align}

コンパクト性

 ハイネ=ボレルの被覆定理の解説に先立ち,必要ないくつかのことばを定義し,それらについて多少の解説をおこなう.定義されるのは,見出し通り,「コンパクト」と呼ばれる概念に関することである.

定義 7.1 有界閉集合

 \(\mathbb{R}\) の部分集合が有界な集合でかつ閉集合であるとき,有界閉集合とよぶ.

 

 有界な集合とはその集合の元の絶対値がある値を超えないような集合のことで,閉集合とは,境界を全て含むような集合のことである.また,すこしあとで出てくる開集合というのは,境界を全く含まないような集合のことである.(詳しい定義はこちらを参照)

例 7.2 有界閉区間

 \(a<b\) であるような実数 \(a,b\) に対し,閉区間 \([a,b]\) は有界閉集合である.このように表される有界閉集合を,有界閉区間とよぶ.

定義 7.3 開被覆,部分被覆

 \(\mathbb{R}\) の部分集合 \(A\) に対し,開集合の族 \({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) が1)開集合の族 \({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) とは,集合 \(\{O_{\lambda}\mid{}\lambda\in\Lambda\}\) で,各 \(O_{\lambda}\) が開集合であるもののことである.「集合の族」という語に関しては,集合族の記事も参照.

$$A\subset{}\bigcup_{\lambda\in\Lambda}O_{\lambda}$$

を満たすとき,\({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) を \(A\) の開被覆という.\({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) は \(A\) を被覆する,というような言い方をすることもある.さらに,\({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) の部分集合 \({}(U_{\lambda’})_{\lambda’\in\Lambda’}\) が

$$A\subset{}\bigcup_{\lambda’\in\Lambda’}U_{\lambda’}$$

を満たすとき,\({}(U_{\lambda’})_{\lambda’\in\Lambda’}\) は \({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) の部分被覆であるという.とくに \({}(U_{\lambda’})_{\lambda’\in\Lambda’}\) が有限集合であるような場合には,有限部分被覆という.

例 7.4 

 各 \(n\in\mathbb{N}\) に対して \(O_n=(-n,+n)\) とおくと,\({}(O_{n})_{n\in\mathbb{N}}\) は \(\mathbb{R}\) の開被覆である.\({}(O_{2n})_{n\in\mathbb{N}}\) は \({}(O_{n})_{n\in\mathbb{N}}\) の部分被覆となっている.

 また,\(\mathbb{R}\) の有界な部分集合 \(A\) に対しては,ある自然数 \(N\) があって \(A\subset(-N,+N)\) となり,もちろん \({}(O_{n})_{n\in\mathbb{N}}\) も \(A\) の開被覆であるので,\(O_N=(-N,+N)\) は (\(A\)に関して)\({}(O_{n})_{n\in\mathbb{N}}\) の有限部分被覆になっている.

定義 7.5 コンパクト

 \(\mathbb{R}\) の部分集合 \(A\) について,任意の開被覆が有限部分被覆を持つとき,すなわち,\(A\subset{}\bigcup_{\lambda\in\Lambda}O_{\lambda}\) なる任意の開集合の族 \({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) に対し,\(\lambda_1,\lambda_2,\cdots,\lambda_n\)(有限個)があって

$$A\subset{}O_{\lambda_1}\cup{}O_{\lambda_2}\cup\cdots\cup{}O_{\lambda_n}$$

が成立するとき,\(A\) はコンパクトであるという.

 

 「コンパクト」という概念はこの記事のあとの部分で出てくるハイネ=ボレルの被覆定理を理解するには不可欠な概念であり,非常に重要である.

 理解の助けになるよう,簡単な例を証明と共にあげておく.

例 7.6 一点集合

 \(\mathbb{R}\) の一点集合である \(\{0\}\) について考えよう.

 \(\{0\}\subset(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) をみたす開集合の族 \({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) を任意に与える.この \(\{0\}\) の開被覆に対し,ある \(\lambda_0\in\Lambda\) があって \(0\in{}O_{\lambda_0}\) である.したがって \(\{0\}\subset\{O_{\lambda_0}\}\) であり,\(\{O_{\lambda_0}\}\) は \({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) の有限部分被覆になっている.

 \({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) は任意に与えた \(\{0\}\) の開被覆であったので,\(\{0\}\) は任意の開被覆が有限部分被覆をもつことがわかり,したがって,\(\{0\}\) はコンパクトである.

ハイネ=ボレルの被覆定理

 「コンパクト」という概念は,実数の連続性と結びつけて考えるとき,「有界閉」によって言い換えることが可能である.以下で,\(\mathrm{(VI)}\) のハイネ=ボレルの被覆定理を,\(\mathrm{IV}\) の区間縮小法とアルキメデスの原理を用いて示す.

定理 7.7 ハイネ=ボレルの被覆定理

 \(\mathbb{R}\) の部分集合について,以下は同値

\begin{align}
\mathrm{(i)}&:コンパクトである\notag\\
\mathrm{(ii)}&:有界閉集合である\notag
\end{align}

証明

\(\mathrm{(i)}\Rightarrow\mathrm{(ii)}\)

 \(\mathbb{R}\) の部分集合 \(A\) がコンパクトであったとする.\(A\) が有界閉集合であることを示せばよい.

 まず,\(A\) が有界であることを示す.\(n\in\mathbb{N}\) に対し,\(O_n=(-n,+n)\) とおくと,\(\mathbb{R}\subset\bigcup_{n\in\mathbb{N}}O_n\) であるので,\(A\subset\bigcup_{n\in\mathbb{N}}O_n\) も成立し,\({}(O_n)_{n\in\mathbb{N}}\) は \(A\) の開被覆である.
 \(A\) はコンパクトであるので,ある \(N_1,N_2,\cdots,N_k\) があり,
$$A\subset{}O_{N_1}\cup{}O_{N_2}\cup,\cdots,\cup{}O_{N_k}$$
である2)みかけ上,\(N_1,N_2,\cdots,N_k\) は3つ以上の自然数を並べたような書き方になっているが,\(k=1,2\) の可能性もある..ここで,\(N_1,N_2,\cdots,N_k\) の内最大のものをとり,それを \(M\) とおくと,\(A\subset(-M,+M)\) が成り立っている.よって,\(A\) は有界である.

 続いて,\(A\)が閉集合であることを示そう.これには,以下のような性質を使う.

 

1.任意の相異なる2点 \(x,y\) について,\(\delta=|x-y|/2\) とし,
$$O_x=(x-\delta,x+\delta),O_y=(y-\delta,y+\delta)$$
とおくと,
$$x\in{}O_x\ \ かつ\ \ y\in{}O_y\ \ かつ\ \ O_x\cap{}O_y=\emptyset{}\ \ かつ\ \ O_x,O_y{}はどちらも開集合$$
つまり,\(x,y\) は開集合で「分離」できる.

 

2.開集合の有限個の交わり(共通分)は開集合である.

 これを示しておこう.
 有限個の開集合 \(O_1,O_2,\cdots,O_n\) に対し,\(\displaystyle\bigcap_{k=1}^n{}O_k\)の任意に与えた点\(x\)について,各 \(k(=1,2,\cdots,n)\) に対し \(\varepsilon_k\) があり,\({}(x-\varepsilon_k,x+\varepsilon_k)\subset{}O_k\) であるので,\(\varepsilon=\min\{\varepsilon_1,\varepsilon_2,\cdots,\varepsilon_n\}\) とおく.このとき,\({}(x-\varepsilon,x+\varepsilon)\subset\displaystyle\bigcap_{k=1}^n{}O_k\) であるので \(x\) が内点である.以上より \(\displaystyle\bigcap_{k=1}^n{}O_k\) の各点は内点であるので,\(\displaystyle\bigcap_{k=1}^n{}O_k\) は開集合である.

 

3.\(A^c\) (\(A\)の補集合) が開集合なら,\(A\) は閉集合である.(これについては,ここを参照.)

 

 \(A\)が閉集合であることの証明に入ろう.3.より,\(A^c\)が開集合であることを示せばよい.それには,開集合の定義から,\(A^c\)の各点が\(A^c\)の内点であることを示せばよい.

 任意に \(A^c\) の点 \(x\) を与えたとする.このとき,上記1.より,任意の \(A\) の点 \(y\) に対して,共通部分を持たない開集合 \(U_y,\ V_y\) があって,\(x\in{}U_y,\ y\in{}V_y\) をみたす 3)このときの \(U_y,V_y\) は1.のようにしてとることにしておけば,\(U_y,V_y\) は一意に(曖昧なく)定まる..このとき,\({}(V_y)_{y\in{}A}\) は \(A\) の開被覆である.\(A\) はコンパクトであったので,有限個の \(A\) の点 \(y_1,\ y_2,\ \cdots,\ y_n\) があって,
$$A\subset{}V_{y_1}\cup{}V_{y_2}\cup{}\cdots\cup{}V_{y_n}$$
である.この \(y_1,y_2,\cdots,y_n\) に対して,
$$U_{y_1}\cap{}U_{y_2}\cap{}\cdots\cap{}U_{y_n}=U$$
とおくと,2.より \(U\) は開集合である.さらに,\(U\) は \(V_{y_1},\ V_{y_2},\ \cdots,\ V_{y_n}\) のいずれとも交わらず,したがって,\(A\) とも交わらない.すなわち,\(U\subset{}A^c\) であり,\(x\) は \(U\) の内点でもあることから,\(A^c\) の内点でもある.\(x\) は任意に与えた \(A^c\) の点であったので,\(A^c\) の各点が \(A^c\) の内点である.

\(\mathrm{(ii)}\Rightarrow\mathrm{(i)}\)

 \(A\) を有界閉集合とする.まずは \(A\) が有界閉区間である場合について証明し,それを利用して一般の場合を示す.

 背理法を用いる.\(A=[a,b]\) とし,\({}(O_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}\) は,無限個の開集合からなる \(A\) の開被覆で,有限部分被覆をもたないとする.このとき,\({}(O_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}\) は \([a,\frac{a+b}{2}],[\frac{a+b}{2},b]\) の開被覆にもなっている.

 \({}(O_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}\) が \([a,\frac{a+b}{2}]\) に関しても \([\frac{a+b}{2},b]\) に関しても有限部分被覆をもつならば,\([a,b]\) も有限部分被覆を持つことになり矛盾する.したがって,少なくとも一方は,\({}(O_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}\) の有限部分被覆をもたない.一方のみが持たない場合は持たない方を,両方が持たない場合は \([a,\frac{a+b}{2}]\) を \(I_1\) とする.以下,\(I_n\) が与えられたとき,同様の手続きによって \(I_{n+1}\) を決定する.これにより,閉区間の列 \({}(I_n)_{n\in\mathbb{N}}\) が得られる.

 閉区間の幅 \(|I_n|\) について,(アルキメデスの原理より)
$$\displaystyle\lim_{n\to\infty}|I_n|=\lim_{n\to\infty}\frac{b-a}{2^{n}}=0$$
であるので,区間縮小法により,すべての \(I_n\) に含まれる \(x\in\mathbb{R}\) がただひとつある.\({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) の元 \(O_{\lambda}\) で,この \(x\) を含むものが少なくともひとつ存在するので、そのような \({}O_\lambda\) を与えたとする.この \(O_{\lambda}\) は開集合なので \(x\) は内点であり,したがって,ある \(\delta>0\) があり \({}(x-\delta,x+\delta)\subset{}O_{\lambda}\) である.この \(\delta\) に対して,\({}(b-a)/2^N<\delta\) なる自然数 \(N\) をひとつ与える.この \(N\) について,\(|I_N|<\delta\) なので,
$$I_N\subset(x-\delta,x+\delta)\subset{}O_{\lambda}$$
であり,\({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) は (\(I_N\) の開被覆として)有限部分被覆を持つ.これは \({}(I_n)_{n\in\mathbb{N}}\) の選び方から矛盾する.

 以上より,\(A=[a,b]\) はコンパクトである.

 

 次に,\(A\) が(有界閉区間とは限らない)有界閉集合である場合を考えよう.

 \(A\) の開被覆 \({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) を任意に与えたとする.\(A\) は有界なので,ある正の数 \(M\) があり \(A\subset[-M,+M]\) が成立する.これに対し \(A^c\) は \(A\) が閉集合であることから開集合であり,\({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\cup{\{A^c\}}\) は \([-M,+M]\) の開被覆となる.

 \([-M,+M]\) はコンパクトなので,\({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\cup{\{A^c\}}\) の有限部分被覆 \({}(U_{\lambda’})_{\lambda’\in\Lambda’}\) を与えることができる.それが \(A^c\) を含まない場合はそれ自身が,含む場合は除いたものが,(\(A\)についての)\({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) の有限部分被覆となっている.\({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) は任意に与えた \(A\) の開被覆だったので,\(A\) はコンパクトである.

(証明終)

 ここで,\(\mathrm{(i)}\Rightarrow\mathrm{(ii)}\)の証明には,実数の連続性を一切用いていないことを注意しておく.

 

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References   [ + ]

1. 開集合の族 \({}(O_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\) とは,集合 \(\{O_{\lambda}\mid{}\lambda\in\Lambda\}\) で,各 \(O_{\lambda}\) が開集合であるもののことである.「集合の族」という語に関しては,集合族の記事も参照.
2. みかけ上,\(N_1,N_2,\cdots,N_k\) は3つ以上の自然数を並べたような書き方になっているが,\(k=1,2\) の可能性もある.
3. このときの \(U_y,V_y\) は1.のようにしてとることにしておけば,\(U_y,V_y\) は一意に(曖昧なく)定まる.