「微分積分学」8.ハイネ=ボレルの被覆定理と実数の連続性

8.ハイネ=ボレルの被覆定理と実数の連続性

 この記事では,ハイネ=ボレルの被覆定理が,実数の連続性を表す同値な定理のひとつであることについて解説する.

ハイネ=ボレルの被覆定理と実数の連続性

 ハイネ=ボレルの被覆定理は,実数の連続性を表す同値な定理のひとつである.実際,以下の6つは全て同値である.

\begin{align}
(\mathrm{I}) &:デデキントの定理\notag\\
(\mathrm{II}) &:ワイエルシュトラスの定理\notag\\
(\mathrm{III}) &:有界で単調な数列は収束する\notag\\
(\mathrm{IV}) &:区間縮小法とアルキメデスの原理\notag\\
(\mathrm{V}) &:ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理\notag\\
(\mathrm{VI}) &:ハイネ=ボレルの被覆定理\notag
\end{align}

このうち,\(\mathrm{(I)~(V)}\)が同値であること,そして,それらからハイネ=ボレルの被覆定理が証明できることについては,ほかの記事(ここを参照)で説明している.この記事では,ハイネ=ボレルの被覆定理が真であると仮定すればボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理が証明できることを示す.

まず,ハイネ=ボレルの被覆定理の主張を述べておく.

定理 8.1 ハイネ=ボレルの被覆定理

 \(\mathbb{R}\)の部分集合について,以下は同値

\begin{align}
\mathrm{(i)}&:コンパクトである\notag\\
\mathrm{(ii)}&:有界閉集合である\notag
\end{align}

 

 これを仮定し,以下のボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理を証明する1)部分列の定義などのボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理の主張に関する解説をこの記事に書いているので,わからない人は参照してほしい.また,こちらに,ハイネ=ボレルの被覆定理の解説も書いてある.

定理 8.2 ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理

 \(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)について,以下は同値

\begin{align}
(\mathrm{i}):&各項がAの元であるような任意の数列は,収束する部分列をもつ.\notag\\
(\mathrm{ii}):&Aは有界である.\notag
\end{align}

証明

 \(\mathrm{(i)}\Rightarrow\mathrm{(ii)}\)の証明は,実数の連続性とはかかわりがないので省略する(こちらを参照).以下\(\mathrm{(ii)}\Rightarrow\mathrm{(i)}\)を示す.

 \(A\) を \(\mathbb{R}\) の有界な部分集合とし,\(\{a_n\}\) を,各項が \(A\) の元であるような数列とする.\(\{a_n\}\) の部分列で収束するものを構成すればよい.

 \(\{a_n\mid{}n\in\mathbb{N}\}\) が有限集合なら,それに含まれるある点 \(x\) について \(a_m=x\) なる自然数 \(m\) が無限にあるので,\(n(k)\) をそのような自然数の内小さい方から \(k\) 番目の自然数とすれば,\(\{a_{n(k)}\}\) は収束する2) \(\mathbb{N}\) の空でない部分集合には,必ず最小の元があるという性質(\(\mathbb{N}\) の整列性)を用いている.

 \(\{a_n\mid{}n\in\mathbb{N}\}\) が無限集合であるとする.\(\{a_n\mid{}n\in\mathbb{N}\}=A’\) とおく.\(A\) は有界なので,ある正数 \(M\) により \(A\subset[-M,+M]\) とできる.まず,ある \([-M,+M]\) の点 \(x\) があって,\(x\) を含む任意の開集合 \(O\) について \(A’\cap{}(O-\{x\})\not=\emptyset\) となることを,背理法で示す.

 これが成り立たないとすると,\([-M,+M]\) の任意の点 \(x\) に対し,\(x\) を含む開集合 \(O_x\) で \(A’\cap{}(O_x-\{x\})=\emptyset\) なるものがある.\({}(O_x)_{x\in[-M,+M]}\) は \([-M,+M]\) の開被覆となり,ハイネ=ボレルの被覆定理より\([-M,+M]\) はコンパクトであるので,有限個の点 \(x_1,x_2,\cdots,x_n\) により

$$A\subset[-M,+M]\subset{}O_{x_1}\cup{}O_{x_2}\cup\cdots\cup{}O_{x_n}$$

とできる.このとき,\(A’\subset{}A\) であることから,

$$A’\subset{}(A’\cap{}O_{x_1})\cup{}(A’\cap{}O_{x_2})\cup\cdots\cup(A’\cap{}O_{x_n})\subset\{x_1,x_2,\cdots,x_n\}$$

となる.これは,\(A’\) が無限集合であることに矛盾.よって,ある \([-M,+M]\) の点 \(x\) があって,\(x\) を含む任意の開集合 \(O\) について \(\{a_n\mid{}n\in\mathbb{N}\}\cap{}(O-\{x\})\not=\emptyset\) となる.そのような点 \(x\) を与えたとする.

 このとき,\(\{a_n\}\) の収束する部分列を次のように構成できる.まず,\({}(x-{1}{},x+{1}{})\cap{}A’\)の元 \(a_{m_1}\) をとり,\(n(1)=m_1\) とする.次に \(n(2)\) を,
$$n(2)=\min\{{m_2\mid{}m_2>n(1),\ {}a_{m_2}\in(x-\frac{1}{2},x+\frac{1}{2})\cap{}A’}\}$$

とする(\(\min{S}\) は \(S\) の最小限).以下同様に,\(n(k)\) まで決まったとき,\(n(k+1)\) を

$$n(k+1)=\min\{{m_{k+1}\mid{}m_{k+1}>n(k),\ {}a_{m_{k+1}}\in(x-\frac{1}{k+1},x+\frac{1}{k+1})\cap{}A’}\}$$

と定める3) \(n(2),\ n(3),\ \cdots\) の決定にも,\(\mathbb{N}\) の整列性を用いている..こうすれば,\(\{a_{n(k)}\}\) は \(\{a_n\}\) の部分列で,\(x\) に収束する.

(証明終)

 

 以上により,ハイネ=ボレルの被覆定理が真であることを仮定すれば,ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理も真となることがわかった.

 以下の実数の連続性を表す6つの定理のうち,\(\mathrm{(I)~(V)}\)が同値であること,そして,それらからハイネ=ボレルの被覆定理が証明できることについては,ほかの記事(ここを参照)で説明している.それらとこの記事の内容を併せれば,以下の定理がすべて同値であることがわかる.

\begin{align}
(\mathrm{I}) &:デデキントの定理\notag\\
(\mathrm{II}) &:ワイエルシュトラスの定理\notag\\
(\mathrm{III}) &:有界で単調な数列は収束する\notag\\
(\mathrm{IV}) &:区間縮小法とアルキメデスの原理\notag\\
(\mathrm{V}) &:ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理\notag\\
(\mathrm{VI}) &:ハイネ=ボレルの被覆定理\notag
\end{align}

 

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References   [ + ]

1. 部分列の定義などのボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理の主張に関する解説をこの記事に書いているので,わからない人は参照してほしい.また,こちらに,ハイネ=ボレルの被覆定理の解説も書いてある.
2. \(\mathbb{N}\) の空でない部分集合には,必ず最小の元があるという性質(\(\mathbb{N}\) の整列性)を用いている.
3. \(n(2),\ n(3),\ \cdots\) の決定にも,\(\mathbb{N}\) の整列性を用いている.