「微分積分学」9.有理数の稠密性

9.有理数の稠密性

 この記事では,有理数(や無理数)の「稠密性(ちゅうみつせい)」と呼ばれる性質について解説する.

有理数の稠密性

 ここでいう「稠密」とは,任意の \(\mathbb{R}\) の点 \(r\) と任意の正の数 \(\varepsilon\) に対して \({}(r-\varepsilon,r+\varepsilon)\) に含まれる有理数が存在する,ということである.これは,任意の(空でない)開区間\({}(a,b)\) には有理数が含まれている,と言い換えることができる.以下,これを示そう.

定理 9.1

  \(a,b\in\mathbb{R},a<b\) とする.\(q\in(a,b)\) なる有理数 \(q\) が存在する.

証明

 アルキメデスの原理より,\(1<n(b-a)\) なる自然数 \(n\) がある.そのような自然数 \(n\) に対し,\(1<nb-na\) であるので,\(na<m<nb\) なる整数数 \(m\) がある.(\(na<m\)なる整数\(m\)の内で最小のものをとればよい.)

 このような\(m,n\) に対し,\(a<m/n<b\) であり,なおかつ \(m/n\in\mathbb{Q}\) である.\(q=m/n\) とすればよい.

(証明終)

 これにより,以下のような性質がわかる.

定理 9.2

 \(\mathbb{R}\) の部分集合 \(A\) が閉集合であり,なおかつ \(\mathbb{Q}\subset{}A\) ならば,\(A=\mathbb{R}\) である.

証明

 証明は,背理法による.\(A\) が \(\mathbb{Q}\) を含む \(\mathbb{R}\) の閉集合であると仮定する.さらに,\(A\not=\mathbb{R}\) としよう.このとき, \(A^c\) は,空でない開集合である.(閉集合の補集合は開である.これについてはこちらを参照)

 \(A^c\) は空でないので,その元 \(x\) を与えることができる.開集合の各元は内点であるので,ある正の数 \(\varepsilon\) により,
$$(x-\varepsilon,x+\varepsilon)\subset{}A^c$$
とすることができる.定理 9.1 より,\({}(x-\varepsilon,x+\varepsilon)\) は有理数を少なくとも一つ含み,\({}(x-\varepsilon,x+\varepsilon)\) に含まれる有理数は \(A^c\) の元である.これは,\(A\subset\mathbb{Q}\) と矛盾する.

 したがって \(A=\mathbb{R}\) である.

(証明終)

 無理数も,上記のような性質を持つ.適当に無理数 \(\alpha\) を与えておいて,\({}(a-\alpha,b-\alpha)\) に含まれる有理数に \(\alpha\) を加えれば,それは \({}(a,b)\) に含まれる無理数となる.

 

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