「微分積分学」10.数列の極限の定義と基本的性質

10.数列の極限の定義と基本的性質

 この記事では,数列1)数列(点列)とは,詳しく言えば,\(\mathbb{N}\)からある集合(この記事の場合は\(\mathbb{R}\))への写像である.なお,この記事では,\(\mathbb{N}\) は0を含むこととする.の極限の定義とそれらに関する基本的な事実について解説する.(数列の極限の定義はこの記事でも解説している.\(\varepsilon\)-\(N\) 論法の解説が見たい人は,そちらの記事をおすすめする.)

定義と一意性

 「無限に近づく」ということの適切な言いかえが何によって与えられるのかというのは,重大な問題である.極限は,以下のようにして定式化される.以下,単に数列といえば各項は実数であるとする.

定義 10.1 数列の極限

 数列 \(\{a_n\}\) が \(\alpha\) に収束するとは,任意の正の数 \(\varepsilon\) に対して

$$N<n\Rightarrow|a_n-\alpha|<\varepsilon$$

なる自然数 \(N\) が存在することである.このとき,

$$\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha$$

あるいは

$$a_n\to\alpha\ \ (n\to\infty)$$

と表記する.また,ある実数 \(\alpha\) があって数列 \(\{a_n\}\) が \(\alpha\) に収束するとき,単に,数列 \(\{a_n\}\)は収束する,という.

 

 この定義に従えば,ひとつの数列が異なるふたつの実数に収束することはない.

定理 10.2 極限の一意性

 収束する数列 \(\{a_n\}\) が与えられているとする.このとき,

$$[\ \lim_{n\to\infty}a_n=\alpha\ \ かつ\ \lim_{n\to\infty}a_n=\beta\ ]\Rightarrow{}\alpha=\beta$$

証明

 任意に正の数 \(\varepsilon\) を与える.このとき,\(a_n\) が \(\alpha\) にも \(\beta\) にも収束するので,ある自然数 \(N_1,N_2\) により,

\begin{align}
{N_1<n\Rightarrow}&|a_n-\alpha|<\frac{1}{2}\varepsilon\notag\\
{N_2<n\Rightarrow}&|a_n-\beta|<\frac{1}{2}\varepsilon\notag
\end{align}

となるようにできる.ここで,\(N_1,N_2\) の双方より大きい自然数 \(N\) を与えれば,三角不等式より

$$|\alpha-\beta|\leq|\alpha-a_N|+|a_N-\beta|<\frac{1}{2}\varepsilon+\frac{1}{2}\varepsilon=\varepsilon$$

以上より,任意の正の数 \(\varepsilon\) に対して,\(|\alpha-\beta|<\varepsilon\) が成立する.

 ここで \(\alpha\not=\beta\) であるとすると,\(|\alpha-\beta|\) は正の数であるので,\(|\alpha-\beta|<|\alpha-\beta|\) となり矛盾.したがって,\(\alpha=\beta\) である.

(証明終)

 

 ここで,ちょっとした注意事項を述べておく.ある数列がある値に収束することを証明する際には,任意に与えた正の数 \(\varepsilon\) に対して,定義の条件をみたす自然数 \(N\) を与えることが可能であることを示せばよい.

 また,定義の \(|a_n-\alpha|<\varepsilon\) の部分を,ある(\(\varepsilon\) に依存しない)正の「定数」\(C\) を与えて,
$$|a_n-\alpha|<C\varepsilon$$
と置き換えても全く同じ主張になる.なお,\(|a_n-\alpha|<\varepsilon\) は,
$$\alpha-\varepsilon<a_n<\alpha+\varepsilon$$
と同じことである.

極限の基本公式

 ここでは,高校で習ったであろう極限の基本的な公式について解説する.定理 10.3 は基本的であり,定理 10.4 の証明に用いられる.定理 10.4 もよく知られた内容で,感覚的には当然ともいえるような内容である.

定理 10.3

 収束する数列は,有界である.すなわち,\(\{a_n\}\) が収束するならば,ある正の数 \(M\) があって,任意の自然数 \(n\) に対して \(|a_n|<M\) が成り立つ.

証明

 数列 \(\{a_n\}\) が収束し,\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha\) であるとする.このとき,ある自然数 \(N\) があって,

$$N<n\Rightarrow{}|a_n-\alpha|<1$$

となる.そこで,

$$M=1+|\alpha|+\sum_{k=0}^{N}|a_k|$$

とおくと,任意の自然数 \(n\) について

$$|a_n|<M$$

である.

(証明終)

 

定理 10.4

 数列 \(\{a_n\}\) と \(\{b_n\}\) が収束し,\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha,\ \displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\beta\) とする.このとき,以下が成立する.

\begin{alignat}{2}
(1){\ }&\lim_{n\to\infty}(a_n+b_n)&\ =\ &\alpha+\beta\notag\\
(2){}\ &\lim_{n\to\infty}(a_n-b_n)&\ =\ &\alpha-\beta\notag\\
(3){}\ &\lim_{n\to\infty}a_nb_n&\ =\ &\alpha\beta\notag\\
(4){}\ &\lim_{n\to\infty}a_n/b_n&\ =\ &\alpha/\beta\ \ (\beta\not=0のとき)\notag
\end{alignat}

証明

\(\mathrm{(1),(2)}\) の証明

 任意に正の数 \(\varepsilon\) を与える.このとき,ある自然数 \(N_1,N_2\) により,

\begin{align}
N_1<n\Rightarrow&|a_n-\alpha|<\frac{1}{2}\varepsilon\notag\\
N_2<n\Rightarrow&|b_n-\beta|<\frac{1}{2}\varepsilon\notag
\end{align}

が成り立つようにできる.\(\max\{N_1,N_2\}<n\) なる自然数 \(n\) について,

\begin{align}
{}&\alpha-\frac{1}{2}\varepsilon<a_n<\alpha+\frac{1}{2}\varepsilon\notag\\
{}&\beta-\frac{1}{2}\varepsilon<b_n<\beta+\frac{1}{2}\varepsilon\notag
\end{align}

であり,したがって,\(N\) より大きい任意の自然数 \(n\) について,

\begin{align}
{}&(\alpha+\beta)-\varepsilon<a_n+b_n<(\alpha+\beta)+\varepsilon\notag\\
{}&(\alpha-\beta)-\varepsilon<a_n-b_n<(\alpha-\beta)+\varepsilon\notag
\end{align}

\(\mathrm(3)\) の証明

 \(\{a_n\}\) は収束するので,定理 10.3 より,任意の自然数 \(n\) に対し \(|a_n|<M’\) が成立するような実数 \(M’\) が存在する.\(M=\max\{M’,|\beta|+1\}\) とおく.

任意に正の数 \(\varepsilon\) を与える.このとき,ある自然数 \(N_1,N_2\) により,

\begin{align}
N_1<n\Rightarrow&|a_n-\alpha|<\varepsilon\notag\\
N_2<n\Rightarrow&|b_n-\beta|<\varepsilon\notag
\end{align}

となるようにできる.ここで,\(\max\{N_1,N_2\}<n\) なる自然数 \(n\) に対して,

\begin{align}
|a_nb_n-\alpha\beta|&=|a_nb_n-a_n\beta+a_n\beta-\alpha\beta|\notag\\
{}&\leq|a_nb_n-a_n\beta|+|a_n\beta-\alpha\beta|\notag\\
{}&\leq|a_n||b_n-\beta|+|\beta||a_n-\alpha|\notag\\
{}&<{}M\varepsilon+M\varepsilon=2M\varepsilon\notag
\end{align}

が成立し,\(2M\) は正の定数なので,\(a_nb_n\to\alpha\beta\ (n\to\infty)\) である.

\(\mathrm{(4)}\) の証明

 (3)をすでに示しているので,\(\beta\not=0\) として \(\{1/b_n\}\) が \(1/\beta\) に収束することを示せばよい.

任意に正の数 \(\varepsilon\) を与える.\(\varepsilon\) と \(|\beta|/2(>0)\) についてある自然数 \(N_1,N_2\) で,

\begin{align}
N_1<n\Rightarrow&|b_n-\beta|<|\beta|/2\notag\\
N_2<n\Rightarrow&|b_n-\beta|<\varepsilon\notag
\end{align}

なるものを与えることができる.ここで,\(|x-y|<|y|/2\Rightarrow|x|>|y|/2\) が任意の実数 \(x\) と任意の \(0\) でない実数 \(y\) に対して成り立つので,

$$N_1<n\Rightarrow|b_n|>|\beta|/2$$

である.ここで,\(\max\{N_1,N_2\}<n\) なる自然数 \(n\) に対して,

\begin{align}
\left|\frac{1}{b_n}-\frac{1}{\beta}\right|&=\left|\frac{\beta-b_n}{b_n\beta}\right|\notag\\
{}&\leq\frac{2|\beta-b_n|}{|\beta|^{2}}\notag\\
{}&<\frac{2\varepsilon}{\ |\beta|^2}\notag
\end{align}

となり,\(2/|\beta|^2\) は正の定数なので,\(1/b_n\to1/\beta\ (n\to\infty)\) である.

(証明終)

 

前の記事:9.有理数の稠密性

References   [ + ]

1. 数列(点列)とは,詳しく言えば,\(\mathbb{N}\)からある集合(この記事の場合は\(\mathbb{R}\))への写像である.なお,この記事では,\(\mathbb{N}\) は0を含むこととする.