「集合と写像」2.4 可算と非可算2

この記事では,\(\mathfrak{P}(\mathbb{N})=\mathbb{R}\) と \(|\mathbb{R}|=|\mathbb{R}\times\mathbb{R}|\) の証明をおこなう.なお,\(\mathfrak{P}(\mathbb{N})\) は \(\mathbb{N}\) のべき集合であり,このサイトでは \(0\in\mathbb{N}\) としている.

\(|\mathfrak{P}(\mathbb{N})|=|\mathbb{R}|\)

\(|\mathbb{N}|<|\mathbb{R}|\) であり,また,カントールの定理(ここを参照)より \(|\mathbb{N}|<|\mathfrak{P}(\mathbb{N})|\) であることがわかる.これらふたつの集合 \(\mathbb{R}\) と \(\mathfrak{P}(\mathbb{N})\) の濃度が等しいことを示す.補題をひとつ示して準備を行ってから証明に入る.

補題 2.4.1

\(\mathbb{R}\) とその任意の区間は,濃度が等しい.

証明

まず,\(f:\mathbb{R}\to(-1,1)\) を

$$f(x)=
\begin{cases}
\frac{x}{1+x} & (0\leq{}x)\\
\frac{x}{1-x} & (x<0)
\end{cases}$$

で定めると,\(f\) は全単射である.よって \(|\mathbb{R}|=|(-1,1)|\) である.

次に,任意の有界1)\(\mathbb{R}\)の部分集合についての有界の意味はここを参照な開区間 \({}(a,b),(c,d)\) について \(|(a,b)|=|(c,d)|\) であることを示す.\(g:(0,1)\to(a,b)\) を

$$g(t)=(1-t)a+tb$$

で定めれば,\(g\) は全単射である.したがって,\(|(0,1)|=|(a,b)|\) である.ここで,任意の \(a<b,c<d\) なる実数 \(a,b,c,d\) に対して \(|(a,b)|=|(0,1)|かつ|(0,1)|=|(c,d)|\) なので,\(|(a,b)|=|(c,d)|\) である(具体的に全単射を構成するのも難しくない).これにより,\(|(-1,1)|=|(a,b)|\) を得ることができる.

先に \(|\mathbb{R}|=|(-1,1)|\) がわかっており,さらに任意の \(a<b\) なる実数 \(a,b\) について \(|(-1,1)|=|(a,b)|\) であることとから \(|\mathbb{R}|=|(a,b)|\) である.任意の有界な区間 \({}(a,b],[a,b),[a,b]\) について,いずれも濃度が \({}(a,b)\) 以上 \(\mathbb{R}\) 以下であり \(|\mathbb{R}|=|(a,b)|\) であるので,任意の有界な区間と \(\mathbb{R}\) は濃度が等しい(定理 2.1.6(ベルンシュタインの定理)を参照).

次に,有界でない区間について考えよう.任意の実数\(\mathbb{R}\)について

$$|\mathbb{R}|=|(r,r+1)|\leq|(r,\infty)|\leq|\mathbb{R}|$$

なので,\(|\mathbb{R}|=|(r,\infty)|\) である.下に有界でなく,上に有界な区間についても,同様に,\(|\mathbb{R}|=|(-\infty,r)|\) であることが示せる.上にも下にも有界でない区間は \(\mathbb{R}\) と一致する.

(証明終)

 

定理 2.4.2

\(|\mathfrak{P}(\mathbb{N})|=|\mathbb{R}|\)

証明

ベルンシュタインの定理より,\(\mathfrak{P}(\mathbb{N})\) から \(\mathbb{R}\) への単射と \(\mathbb{R}\) から \(\mathfrak{P}(\mathbb{N})\) への単射とがどちらも存在することを示せばよい.そのためには,実際に単射を与えればよい.

まずは,\(\mathfrak{P}(\mathbb{N})\) から \(\mathbb{R}\) への単射を与えよう.それには,\(\mathfrak{P}(\mathbb{N})\) の元 \(X\) に対し,小数第 \(n\) 位が,\(n\notin{}X\) なら \(0\),\(n\in{}X\) なら \(1\) であるような十進小数を対応させる写像を考えればよい.

次に,\(\mathbb{R}\) から \(\mathfrak{P}(\mathbb{N})\) への単射を与えよう.補題 12.1 より,\(\mathbb{R}\) から \({}(0,1)\) への単射が存在するので,\({}(0,1)\) から \(\mathfrak{P}(\mathbb{N})\) への単射を与えればよい.\({}(0,1)\) の任意の元を,二進法により小数に展開しておく.この際,有限小数は有限個の位を除いて \(0\) となるような表記を採用すると決めておけば,表記は一意に定まる2)これを示すのは手間がかかる上に,その証明はこの記事の話題とあまり関係がないので,認めることにする..そこで,\({}(0,1)\) の元に対し,小数第 \(n\) 位が \(0\) ならば \(n\notin{}X\),小数第 \(n\) 位が \(1\) ならば \(n\in{}X\) として \(\mathbb{N}\) の部分集合 \(X\) を与える写像を考えれば,これは \({}(0,1)\)から \(\mathfrak{P}(\mathbb{N})\) への単射になっている.

(証明終)

 

 

\(|\mathbb{R}|=|\mathbb{R}\times\mathbb{R}|\)

ここでは,\(|\mathbb{R}|=|\mathbb{R}\times\mathbb{R}|\) を証明する.これにより,実数と複素数や \({}(x,y)\) 平面と\({}(x,y,z)\) 空間が「集合としては」実質的に同じであるということがわかる.

定理 2.4.3

\(|\mathbb{R}|=|\mathbb{R}\times\mathbb{R}|\)

証明

\(f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\times\mathbb{R}\) を

$$f(x)=(x,0)$$

とすれば,\(f\) は単射である.したがって,\(|\mathbb{R}|\leq|\mathbb{R}\times\mathbb{R}|\) である.

次に, \(\mathbb{R}\times\mathbb{R}\) から \(\mathbb{R}\)への単射の存在を示す.これを示すには,\(|\mathbb{R}|=|(0,1)|\) なので,\({}(0,1)\times(0,1)\) から \(\mathbb{R}\) への単射の存在を示せばよい.\({}(0,1)\times(0,1)\)の元\({}(x,y)\)に対し

\begin{align}
x&=0.x_1x_2x_3x_4\cdots\notag\\
y&=0.y_1y_2y_3y_4\cdots\notag
\end{align}

のように二進小数に展開し3)ここでも,有限小数は有限個の位を除いて \(0\) であるような表記を採用すると決めておけばよい.,それを利用して

$$0.x_1y_1x_2y_2x_3y_3\cdots$$

を対応させる写像を考えれば,それは単射である.以上より \(\mathbb{R}\times\mathbb{R}\) から \(\mathbb{R}\) への単射が存在し,\(|\mathbb{R}\times\mathbb{R}|\leq|\mathbb{R}|\) である.

\(|\mathbb{R}|\leq|\mathbb{R}\times\mathbb{R}|\) と \(|\mathbb{R}\times\mathbb{R}|\leq|\mathbb{R}|\) から,ベルンシュタインの定理より \(|\mathbb{R}|=|\mathbb{R}\times\mathbb{R}|\) である.

(証明終)

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参考書籍

この記事の内容を勉強するにあたり,定番で,筆者も使用している本を紹介します.(定価は2020年05月16日時点のものを表記しています.)

 

まずひとつ目は,内田 伏一著「集合と位相」,通称「内田」です.筆者は主にこちらを使用しています.

数学の基礎となっている集合論の内容と位相空間論の内容をまとめた本です4)普通,大学の数学科では「集合と位相」というタイトルで講義が開講されるので,それに合わせた内容になっています..なお,筆者が用いているのはこれの旧版で,増補改訂版では,演習問題の解答が拡充されているようです.


 

 

  ふたつ目は,松坂 和夫著「集合・位相入門」,通称「松坂」です. 内田同様,位相空間まで網羅した内容となっているほか,濃度の演算や順序数の古典的な扱いにふれられています(内田では省略されている).なお,筆者は,こちらの本も旧版を使っています.  


 

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References   [ + ]

1. \(\mathbb{R}\)の部分集合についての有界の意味はここを参照
2. これを示すのは手間がかかる上に,その証明はこの記事の話題とあまり関係がないので,認めることにする.
3. ここでも,有限小数は有限個の位を除いて \(0\) であるような表記を採用すると決めておけばよい.
4. 普通,大学の数学科では「集合と位相」というタイトルで講義が開講されるので,それに合わせた内容になっています.